「歌が上手い」ってどういうこと?ボイストレーナーが考えてみた

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『先生!「歌が上手い」って、具体的にどういうことなんですか?』

ボイストレーニングの現場では生徒さんや、歌を習おうか迷い中の方に時々こんな質問をされます。

この記事では「歌が上手い」とはどういうことなのか何をもってして「歌が上手い」と言えるのかを、現役のボイストレーナー/ミュージシャンである私の視点から紐解いていきたいと思います。

「歌が上手い」の定義とは?

カラオケの点数

ボイストレーナーとして日々生徒さんと接しているとよく「カラオケの点数を上げたいんです!」と言われます。

私のレッスンでは基本的に、まずは腹式呼吸や脱力といった基礎が身に付くよう指導していきます。

その中で、慣れてきたころに状況を見計らって、「カラオケの点数が上がるレッスン」をします。

①採点の仕組みを説明する

②歌の中で音程がズレるポイントに特化して、減点する要素を減らしていく

③点数が上がるテクニックを説明する

④曲中のポイントを取り上げ、そこでテクニックを使って歌えれば加点されることを説明する

⑤テクニックを使ってポイントを歌えるよう指導する

⑥「これじゃない感」を感じて頂く(ここが大事!)

 

・・・⑥の圧倒的違和感たるや!「これじゃない感」って!?

巷の「カラオケの点数が良くなるレッスン」では、①〜⑤までに留めて満足感を煽るような練習をしているのではないかと推測しています。まあ、私でも95点以上いくとぼちぼち嬉しいですが、点数を狙いにいく時の歌は昔流行った「電撃イライラ棒」をやっているような気分になります(やったことないですが。笑)

だから、私は⑥に気づいてもらえるよう、目の前で「点数を狙いにいく時の歌」ともう一つ、「歌いたいことを歌う歌」を見せるようにしています。すると、「カラオケの点数=上手いではない」ということに気づき、パラダイムシフト(価値観の変化、、というかどんでん返し)が起きるのです。

ゲームのように高得点を狙うのもそれはそれで面白いですが、間違えないように、仰々しくテクニックを駆使して歌が、心の底から喜べるものや人を感動させるものだとは限りません。

とはいえ、点数で数値化され、テクニックを使用した回数や音程の誤差が表示されるという点において、ある程度「上手さ」の客観性を担保しています。

高い声が出せる

「高い声が出せるようになりたいんです!」

という方もたくさんいらっしゃいます。これは男女問わずある種永遠の憧れみたいなところがありますよね。

では、低い声がかっこいい福山雅治さんの歌がなぜあんなに心惹かれるのか。

「声が高いから上手い」とは、どうも言えなさそうですね。

音程が正しい

先のカラオケの点数に近い話ですが、音程が正しく歌えることが「上手い」なのか。これは概ね正解だと私は捉えています。曲のメロディを高い再現性で歌えるということは、すなわち「思い通りに上手く歌える」ことのひとつの要素なのではないでしょうか。

しかし、そうするとThe Rolling Stones(ローリング・ストーンズ)のMick Jagger(ミック・ジャガー)の歌はなぜあんなに「刺さる」のか。

あるいは、友達や家族や恋人が誕生日に歌ってくれる、なんだか音程がイマイチな「ハッピーバースデー」がなぜあんなに心地よいのか。

「音程が正しいから上手い」とも、どうも言いきれないです。

そう。定義、、明確には出来ないのです。ただ・・・

これ以外にも「上手い」を規定しうる要素はたくさんありますが、それらはどれも本質を突くものではないので一旦ここまでにします。

ただ、そうは言っても、あなたの心をわし掴みにする歌が世の中に確実に存在するはずです。そんな歌に憧れるからこそ、歌えるようになりたいと思うのではないでしょうか。

では気を取り直して、その不確かな「歌が上手い」というものの正体がなんなのか。それを紐解いていきます。

改めて「歌が上手い」を考えてみる

心に響く

あなたはテレビで「カラオケ王選手権」みたいな番組を見たことがありますか。あるいは「モノマネ王者決定戦」みたいなものでも構いません。どちらも、本人よりも本人のような、あるいは本人以上に歌えている感じに見える方々が出てきますね。

そんな方々と同じ場で本人が歌って、点数で負けて・・・この光景を見るたびに複雑な気持ちになるのは私だけでしょうか。

「本人の歌の方がよほど響くのに・・・」

確かに採点のゲージを見ると本人よりも「カラオケ王」や「モノマネ王」の方が正確です。ただ、明らかに「そういう問題じゃない」のです。本人が歌う歌の迫力は、たとえテレビ越しで見ていても伝わるものがありますよね。

「心に響く」というのはひとつの答えかもしれません。

胸に刺さる

私はこれまでに幾度となく胸に刺さる歌を聴いてきました。そして、そんな歌に憧れて音楽を職業にしています。

別にプロの有名ミュージシャンでなくとも、デビューしたての若手や路上ライブに励むストリートミュージシャン、イベントで偶然一緒になった歌い手・・・。なんならその人となりが好きじゃなかったはずなのに、いつの間にか歌に惹かれてしまっていることだってしばしばあります。

私の好きなフジファブリックというバンドのヴォーカルを務めていた志村さんは、お世辞にも上手だとは思えませんが、そういう次元で歌を歌っていませんでした。もっと根源的なところで歌っていて、もうたまらなく歌が胸に刺さってしまうのです。

心に響くのと胸に刺さるのは、一見似ているかもしれませんが明確に違う感覚です。「胸に刺さる」感じというのは、頭で考える前に、歌で射抜かれるような心地を指します。私の場合で言えば、はじめて秦基博さんや玉置浩二さんの歌を聴いた時に歌が胸に刺さりました。そして、そのあとで「心に響く」感じがしました。

「胸に刺さる」というのも、ひとつの答えかもしれません。

テクニック=上手い、ではない

ここまで来たらもう明らかですが、改めて「テクニック=上手い」ではないのです。

言い方を変えれば、もし「テクニック=上手い」と考えているならば、まだホンモノの音楽や歌に心が触れ合っていないのかもしれません。確かにテクニックは非常に重要です。全てのミュージシャンはテクニックを養うために練習を積み重ねているはずです。

しかし、テクニックというのは「手段」でしかなく、目的ではありません。何のための手段かと言うと、「思い通りに歌うため」の手段です。ここ、今日の記事で最重要なところです!

ポイント
テクニックは「思い通り」に歌うための手段(でしかない)!

歌は「心/フィーリング」で歌え。それを体現する手段が「テクニック」

以前ニューヨークへ行った折、時間の許す限りボイストレーニングを受け、チャペルでゴスペルを聞き、地元のライブハウスへ足を運んで音楽のシャワーを浴びました。また、こちらが見たくなくても、地下鉄に乗ればパフォーマーが何かしらやっています。

グラミー賞を獲ったミュージシャンのレコーディングを手がけた方からレッスンを受けた際にこんなことを言われました。

“Heart Singing! It’s the most important.”((胸を叩きながら)心で歌うんだ!それが一番大事なことなんだ)

“Good Adlib comes from here! It’s not a technique. It’s a passion!”(良いアドリブは(胸をおさえながら)「ココ」からやってくるのよ!アドリブはテクニックじゃない、気持ちでやるのよ!)

ニューヨークでは各々が全力で、心からのパフォーマンスをしていました。これをあっちだと“Heart Singing”(ハートシンギング)というようです。

「心で歌うにはどうすればいいのか」

改めて自問自答したところ、やはり「テクニック」が大事だなという結論に至りました。ただし、「手段としてのテクニック」です。

テクニックがあることで、人は自由に、思い通りに歌えるようになります。しかし、「何を思って歌うか」がふんわりした状態で歌う方が多いです。テクニックも大事ですが、それ以上にフィーリングが大事なのです。

心当たりのある方は騙されたと思ってこんなショートレッスンをしてみてください。

①歌いたい曲の歌詞を眺める

②歌詞を読んでみる(まずは黙読で良いです)

③歌詞を読んで頭の中でその風景を思い浮かべる

④その風景を言葉で紡ぐように口ずさんでみる(テクニックは度外視で良いです)

⑤その風景をどんなニュアンスで表現したいのか、一度立ち止まって考えてみる

 

これをやってから、カラオケか曲に合わせて歌ってみましょう。多かれ少なかれ「フィーリングのある歌」になるはずです。もし、頭の中で描いたものと声で出したものが一致しないならば、そこをテクニックで補っていくのです。

テクニックとは

テクニックとは、ビブラートやこぶしのような歌唱表現であったり、腹式呼吸や力が抜けた状態で声を出せることとしましょう。また、体に声を響かせて、安定した音程や息で発声することともいえます。

まとめ

今回の記事はいかがでしたか?テクニックを駆使できることで、「頭の中に思い描いたこと」がその通りに近い形で表現できるようになります。

しかし、もしアイデアやベクトルが、つまり「表現したいこと」がきちんと頭の中になければ、歌が意味を持たない記号のようなものになってしまいます。

「歌が上手いとは、テクニックと心が両方備わっていること」

なのではないかと私は考えています。

カラオケの点数の高い歌や、(テクニック的に)上手い歌に必ずしも惹かれないのはなぜか。それは、「フィーリング」がそこにないか欠けているからだと思います。過去にとある映画の主題歌を、新進気鋭の若手女性シンガーと、かたやベテランの女優さんがそれぞれ歌ってこの手の話題で盛り上がったことがありました。

「歌が上手い」とは何なのか?この問いに明確な正解はありません。歌が上手く歌えるためには、自分なりの正解を定義して、それができるように頑張るしか道はないのです。

最後に、私が最も好きな歌のひとつを載せておきます。ロックもR&Bも好きで、どちらかに特化しなければと悩んでいた時期にDonny Hathaway(ダニー・ハサウェイ)が答えを教えてくれました。最高のテクニックと最高のフィーリングが掛け合わさった、最高のヴォーカリストのひとりです。

 

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