
こんな疑問を解決します。
本記事の内容
- 歌の表現力とは?
- 歌唱表現・歌唱テクニック13つ【音の当て方、動かし方】
- 歌唱表現・歌唱テクニック8つ【声の種類、音色】
本記事の筆者
この記事を書いている私は、これまでにプロ・アマ問わず100名以上のボイストレーニングを手がけてきた現役のボイストレーナーです。大手音楽教室のレッスンカリキュラム企画・立案などにも携わる傍ら、R&B、AOR系バンドのヴォーカリストとしても活動中です。
今回は、歌を上手く歌う上で重要な「歌の表現力」について、歌唱表現・歌唱テクニックの観点からお話ししていきます。
そもそも歌の表現力とは何だと思いますか?まず、歌の表現力を4つの要素に切り分けて解説していきます。「歌唱表現・歌唱テクニック」というのは、その中のひとつに過ぎません。
しかし、カラオケの採点機能でもおなじみのビブラートやしゃくりといった歌唱テクニック以外にもたくさんの「技」が存在します。この記事では、なんと22つもの歌唱テクニックを、全て実例付きでご紹介していきます!実例は、お聞きいただきたい箇所の直前から再生されるようにセットしてあるので待たずに聴くことが出来ます。
ぜひ、プロのヴォーカリストが歌の表現力を高めるために、あらゆる歌唱テクニックを駆使して歌っている様を堪能してみてください!歌唱テクニックの数々を耳で聴きながら知識して押さえていくことで、歌の表現力とは何なのかが見えてくるはずです。
そして、気になる歌唱テクニックをあなたが歌いたい歌の中で試し続ける中で、いつしかそれがあなたの「手札」のひとつになり、人の心に響く歌を歌えるようになれば幸いです。
それでは、前置きが長くなってしまいましたが、本題を見ていきましょう。
歌の表現力とは?

そもそも「歌の表現力」とはそもそもどんなものだと思いますか?
歌の表現力とは、歌を通して、楽曲や歌詞に込められた感情や想いを表現する力のことを指します。つまり、「感情表現出来るかどうか」が、歌の表現力の高さに直結しているのです。
感情表現はどのように行うのか、ここでは4つの要素に分けて解説してまいります。今回のトピックの中心は「歌唱表現 / 歌唱テクニック」ですが、その他にも重要な要素があるのでしっかりと確認していきましょう!
歌詞の理解
歌をどう感情表現するかを規定する要素が「歌詞の理解」です。歌詞をどのように理解するかで、歌をどう感情表現するかが全く変わってきます。
感情表現をするには、歌詞をただの文字の羅列として捉えるのではなく、意味のある言葉として捉えることがファーストステップです。
喜び、愛情、悲しみ・・・歌詞のひとつひとつの言葉からどんな感情や想いを感じるか。
あるいは、楽曲全体を通してどんなメッセージを伝えたいのか。
歌詞をしっかりと理解した上で次に行うのは、歌詞とあなたの感情、気持ちをシンクロさせることです。簡単に言えば悲しい歌を悲しい気持ちで、幸せな歌を幸せな気持ちで歌えるかどうかです。
歌詞が理解が浅いと、たとえ歌唱テクニックに長けていても「音の羅列」にしか聴こえません。他人は、それを直感的に見抜いてしまいます。「上手いけどなんかピンとこない・・・」という歌、テレビで聴いたことはないですか?
表情・身振り手振り
「歌詞の理解」をした前提で行われる感情表現のひとつが「表情や身振り手振り」です。
明るい歌を明るい気持ちで歌うとき、きっと表情も明るいですよね?
悲しい歌を悲しい気持ちで歌うとき、表情は悲しい感じになると思います。
歌詞を理解した上で歌うことで、多かれ少なかれ表情が出てきます。表現力が高い歌手は、「顔で歌ってる!」と感心してしまうほどに、嬉しそうな顔や悲しそうな顔をしながら熱唱します。
「表情が変わらない、顔が動かない!」そんな気がしたら、ぜひ鏡を見て自分がどんな顔をして歌っているかチェックしてみましょう。きっと歌に没入出来る度合いが変わってくるはずです。
また、気持ちが乗っていると身振り手振りをしてしまいませんか?
日本人はあまり身振り手振りしない方かもしれませんが、外国人は言葉だけでなくジェスチャーも全力で行います。なぜなら、伝えたいことを全力で伝えにかかっているからいつの間にか身体が動いてしまうからです。
歌も同様で、歌詞の理解を通して伝えたいことがはっきりすると、歌に熱がこもり、手を広げたり高く挙げたり、足でビートを刻み、腰を揺らし・・・といった具合に身体が動き出します。
と言っても、身体が硬直してしまう方は多いので、まずは足や手、首、腰・・・どこでも良いので曲のリズムに合わせて意図的に身体を動かしながら歌うことをおすすめします。そうすることで、身体を動かしやすくなり、徐々に動きが増えてきます。その段階で、今度は好きな歌手が歌う際の身振り手振りをマネてみると良いでしょう。歌手がいかに身振り手振りも交えて表現しにかかっていることが分かるはずです。
抑揚=声の強弱
感情表現を行うテクニック的な要素のひとつが「抑揚」です。盛り上がる部分は力強く伸びやかに大きめな声量で、抑えるべき部分はしっとりと柔らかく小さめな声量で、といった具合にメリハリを付いた歌は感情が乗っている感じがします。
抑揚をつけるためには、楽曲のメロディラインの起伏や歌詞を理解する必要があります。「Aメロ40%、Bメロ60%、サビ80%の声量で」という決め打ちをするのでなく、歌詞の理解に基づいて適切に抑揚を付けることで、気持ちが乗りやすくなり、歌の表現力はぐんと高まります。
歌唱表現、歌唱テクニック
これがこの記事の主なトピックとなります。ここまでの流れを整理すると、歌詞を理解した上で、表情や身振り手振り、抑揚を付けることで感情表現しやすくなり、表現力が高まることがなんとなく分かったのではないかと思います。
とはいえ、これだけではまだ不十分です。歌の中に歌唱表現・歌唱テクニックを盛り込んで「伝えたい想いや気持ち」を表現することで、より色鮮やかに繊細に、そして大胆に表現出来るようになるのです。
上手い歌手は歌う際に意識的・無意識的にあらゆるテクニックを駆使しながら感情表現します。まるで表情や身振り手振りが移り変わるかのごとく、ささやくようなウィスパーボイスで歌ったり、ビブラートをかけて艶やかに歌うのです。
ここからは、そんな歌唱テクニックの数々を「音の当て方、動かし方」と、「声の種類、音色」の2つに分類してお伝えしていきます。いずれも動画で実例を用意しているのでぜひご自身の耳で聴いて確かめてみてください。聴いていただきたい範囲がある場合、その手前から再生されるよう設定しています。ぜひ気になるテクニックをマネて習得してみましょう!
歌唱表現/テクニック【音の当て方、動かし方】

こぶし
こぶしとは、演歌やR&Bなどで多用される、音を瞬間的に上下させる歌唱テクニックです。こぶしを付ける言葉の母音を「ざ”ああ”け〜」と、2回母音をつき直すように歌うのがコツです。
吉幾三 – 酒よ
0:43頃〜サビ、「ひとりざ”ああ”け〜 てじゃくざ”ああ”け〜」と歌声が細かく動く部分で「こぶし」を使っています。
しゃくり
しゃくりとは、正しい音に対して少し低い音で歌い出してから瞬間的に正しい音へ持ち上げる歌唱テクニックです。近年ではしゃくりを付ける頻度が高い歌手が多いため、言われてみれば聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか?
また、「無意識でついやってしまう」技でもあります。しゃくりを付けたい箇所で、音を滑らかにつなぎながら母音を「あ”ぁ”」つき直すように歌うのがコツです。
Aimer – 花の唄
Aimerは「しゃくりの女王」と呼びたくなるほどしゃくりを多用する歌手です。冒頭から「つめた”ぁ”い〜はなび”ぃ”らよ”ぉ”るを〜」と、主に子音の後ろにくっつく母音を強調させるように「しゃくり」を駆使しています。
フォール
フォールとは、語尾の音から低い音へ向かって声をなめらかに下げていく歌唱テクニックです。ここでは「語尾の音から「特定の」低い音へ向かって〜」と定義しておきます。語尾の音が下がっていくことで気だるさや切なさ、色気を感じさせる効果があります。ブラックミュージック系やロック系の歌でよく耳にします。
EGO-WRAPPIN’ – くちばしにチェリー
1:12頃〜「あっぷびーと”ーーー”」と、少しずつ音程が下がっていますね。EGO-WRAPPIN’の独特な雰囲気はフォールによって醸し出されています。
ビブラート
ビブラートは最も知られている歌唱テクニックではないでしょうか?ビブラートとは、語尾で声を伸ばす際に一定の揺れ幅やスピードで声を揺らす歌唱テクニックです。「一定の」というのが重要ですよ!ビブラートは主に横隔膜を使ったもの、喉を使ったもの、口を使ったもの、音程を使ったものがあります。
大原櫻子 – 瞳
人気シンガーソングライター、大原櫻子のビブラートは浅めで細かく揺れる傾向があります。
石井竜也(米米CLUB) – 君がいるだけで
中年以上の方からしたら「ビブラートといえば石井竜也!」と思うもしれません。石井竜也のビブラートは細かめなのですが深くかかっているので大きく揺らしている感じがします。
ロングトーン
ロングトーンは語尾やメロディーを長く伸ばす箇所で歌声を揺らさずにまっすぐ伸ばす歌唱テクニックです。同じ息の強さや音程を保ち続けることがコツです。実際はロングトーンからビブラート、ロングトーンからゆっくりとしゃくり上げなど他のテクニックと併用されるケースが多いです。
MISIA – つつみ込むように
MISIAはビブラートとロングトーンを上手く使い分ける歌手です。
4:18頃から、歌の最後に「つつみ〜こむように〜〜〜〜〜〜〜」と超ロングトーンを披露しています。そのあとでビブラートがかかり出し、フェイクへ移行するなんてカッコ良いですね!
タメ
タメは音の置き方を演奏に対して少し遅い間合いで歌う歌唱テクニックです。歌全体を遅らせるケースもあれば、フレーズの中のある部分だけを遅らせるケースもあり、アーティストの個性や癖と見なされがちですが実は違います。
リズム感が悪くてただ「モタっている」歌手が多い一方、意図的にタメて歌っている歌手も少なからずいます。特にR&Bの世界では(邦楽ではなく世界の話)、タメがR&Bの”R”、すなわちリズムを象徴していて、タメて歌うことが出来なけれダシの入っていない味噌汁のようなものです。
久保田利伸 – Shadows of Your Love
アメリカへ旅立ってからの久保田利伸は、黒人と同じ次元の「タメ」を会得したようです。これは2010年代前半のツアーの映像ですが、一定のリズムで流れているにもかかわらず、リズムの少し後ろで歌もコーラスもプレイヤーも演奏しているのです。
久保田利伸が邦楽R&B歌手の中で異次元にブラックフィーリングが出ているのは、タメて歌えるからに他なりません。R&Bに限らずブラック系の歌を極めたい方は、ぜひこの「タメ」に注目すると良いですよ。
スタッカート
スタッカートはメロディの特定の音を短く切って歯切れ良く歌う歌唱テクニックです。強くアクセントを付けて歌うと鋭い印象になり、軽やかに切るようなアクセントを付けて歌うと浮遊感を醸し出せます。
宇多田ヒカル – Automatic
Jポップの歴史を変えたと言っても過言ではない宇多田ヒカル。名プロデューサー、小室哲哉に「すごい難しいグルーヴ感。ヒカルちゃんが僕を終わらせたって感じですね」と言わしめたのが「Automatic」です。その「グルーヴ」を構成する大事な要素がアクセントなのです。
軽やかに切るようなアクセント、これこそが宇多田ヒカルの真骨頂であり、これもR&Bの「リズム」に欠かせないひとつの要素です。
アクセント(アタック)
アクセントとはメロディの中にある特定に音を強調させる歌唱テクニックです。リズムに乗って歌うと自然に付くほか、意図的にアクセントを付けることで言葉の力強さや疾走感を醸し出す効果があります。あらゆるジャンルで大事な要素ですが、特に重要視されるのがロックです。
WANDS – 世界が終わるまでは
3〜40代の方にとって青春を象徴するようなWANDSを例に。1:12頃から始まるサビの途中「はーなーれーるぅーことーもなーいー」の言葉それぞれに強くアクセントが付いています。この歯切れの良さ、言葉の勢いの強さがロックの雰囲気を醸し出しているのです。
他のジャンルではリズム感や疾走感を演出するためにチャキチャキとアクセントを付けて歌うこともあります。
レガート
レガートは音の間をブツ切れにならないよう、なめらかに歌う歌唱テクニックです。メロディの中で母音が途切れないように繋げて歌うのがコツです。
秋川雅史 – 千の風になって
歌い出しの「おはかのーまーえでー」というフレーズ。全てが滑らかに繋がっています。
リリース
リリースとは語尾でフワッと力を抜き、音程感をフッと無くすことで浮遊感や脱力感を感じさせる歌唱テクニックです。フォールとの違いは「音程感を残すか消すか」です。
Mr.Children – Sign
ミスチルのヴォーカリスト、桜井和寿は語尾でリリースをする頻度が高いです。「とどいてぇ”Heh” くれるといーなぁ”Hah”」といった具合に、歌の音階は消えるものの、息だけが残るのがリリースの特徴です。これは意外とやっている方が多いですよ。
テヌート
テヌートはひとつひとつの音を丁寧に置いていくように歌う歌唱テクニックです。音が流れてしまわないよう、ひとつひとつのしっかりと捉えて歌うことで歌詞がしっかりと入ってくる効果があります。
鬼束ちひろ – 流星群
歌い出しの「こーとーばーにーなーらーないーよーるはー」というフレーズ。少しアクセントがついているものの、全ての言葉を長めに置きに行っているため、丁寧に歌っている印象を受けます。他にも槇原敬之や平井堅らもテヌート気味に歌う傾向があります。
ポルタメント
音程間を移動する際に、カチっと次の音を当てるのではなく、音を滑らせるようになめらかにつなぐ歌唱テクニックです。テンションの高まりや脱力感、スピード感、気だるさを感じさせる効果があります。
ZAYN – PILLOWTALK (Cover by Taka from ONE OK ROCK)
多くの歌手の歌がどこかしらでポルタメントしているわけですが、分かりやすいのはワンオクのTAKAです。全体的に音をかっちりと当てず、次の音を当てる際にゆったりと移動しています。洋楽好きな歌手や帰国子女などのアーティストはポルタメントをよく使う傾向があります。
オーナメント / アドリブ / フェイク
音楽的には「装飾音符」と言われ、一般的にはアドリブやフェイクと呼ばれている歌唱テクニックです。
フィーリングに任せてメロディを細かく動かしたり、メロディだけでなくリズムや言葉を崩して歌うことでその人のオリジナリティやジャズやR&B、演歌など、特定の音楽ジャンルの雰囲気を感じさせる効果があります。
DREAMS COME TRUE – 何度でも
R&Bの影響を大いに受けているドリカムの吉田美和のフェイクは圧巻です。4:00過ぎ〜ラストにかけての怒涛のフェイクをご覧ください。
フェイクはある程度「キメ」を作って歌う方もいれば、完全に即興でやる方もいます。フェイクは曲や歌詞を通して表現したい「何か」が自分の中にないと、たとえそれがどんなに美しくてもテクニカルでも、どうしても音の羅列になってしまいがちです。吉田美和のフェイクは「伝えたい思い」が完全に外へ向かって出切っているんです。これを歌唱「テクニック」として紹介するのは失礼なほど、グッとくるものがあります。
歌唱表現/テクニック【声の種類、音色】

ウィスパーボイス
ささやくような、少し息の混じった優しい歌声のことをウィスパーボイスと言います。甘くて優しい印象を与える効果があります。
Chara – やさしい気持ち
ウィスパーボイスと言えばChara(チャラ)が分かりやすいです。やり過ぎると過度な息が声帯を通って負荷がかかるのでほどほどにすることをおすすめします。
エッジボイス(ヴォーカルフライ / がなり)
エッジボイス(ヴォーカルフライ)とは声帯をブツブツと振動させた声です。ボイトレの基礎練習としても有名な他、歌の中でと歌唱テクニックしてもよく用いられます。
出せる一番低い声から、音程感が無くなって良いのでさらに低い音を歌っていくうちに、喉の奥で声帯だけが動く感覚がします。これがエッジボイスの感覚です。
RYUJI IMAICHI – ONE DAY
EXILE系の歌手は総じてエッジボイスを多用する傾向があります。その中でも個人的に歌声が好きな三代目J SOUL BROTHERSのヴォーカル、今市隆二の曲で説明します。
例えば、冒頭の「”◯”ただひとみ〜」の◯の部分で「あ」に濁点が付いたような声で歌い出しています。エッジボイスで歌い出すことで、このように切ない感じ、艶やかな感じを醸し出す効果があります。
シャウト / スクリーム
シャウト(スクリーム)はデスメタルやヘビメタ等のラウドミュージックやジャズ、R&Bなどで使用される叫ぶような、あるいはガラガラした声で歌う歌唱テクニックです。一口にシャウト、スクリームと言ってもフライスクリーム、フォールスコードスクリーム、グロウル・・・シャウト、スクリームに特化した発声法や音色の使い分けが多数存在する奥が深い世界です。当HPでは「ラウドミュージックに当てはまらない範囲のポップス」に絞って話をしていきます。
ZAYN – PILLOWTALK (Cover by Taka from ONE OK ROCK)
二回目の登場となるワンオクのTAKA。あえて先ほども取り上げた「PILLOWTALK」で解説します。と言ってもこの曲に限らずですが、TAKAは色々な楽曲の最高音周辺でがなる感じのシャウトをよくやります。ラウドミュージックのヴォーカリストは終始声を歪ませて歌っていたりもしますが、TAKAやB’zの稲葉浩志などポップスのヴォーカリストは瞬間的に声に「エッジ」を加えてガラガラした音色で歌う傾向にあります。
チェストボイス
地声のことを専門用語でチェストボイスと言います。
ミドルボイス
ミドルボイスとは、地声(チェストボイス・胸声)と裏声(ファルセット)の中間のような声のことを指します。
あるいは地声と裏声が混ざったような声とも言われます。中〜高音域で用いられ、後に触れるミックスボイスと混同されがちですが別物なのでご注意ください。
あいみょん – 空の青さを知る人よ
あいみょんの持ち味は確かに低いトーンの声ですが、実はここ1〜2年、徐々に高音域が拡がっていることをご存知でしょうか?3:55位〜ラストにかけての大サビで、あいみょんはHiBでロングトーンしたり、それ以上の高さ(最高音HiE)を楽に出しています。女性の皆さんの多くはこのHiB周辺から声が力み出すわけですが、最近のあいみょんはミドルボイスや後述するミックスボイスを習得し、楽に歌っている印象です。やはりボイトレは重要ですね!
ファルセット
一般的に「裏声」と言われるのがファルセットです。実は裏声には色々と種類があるのですが、ファルセットは息漏れさせた弱々しく、あるいは柔らかい音色の裏声です。ファルセットを使うことで切なさや弱さを出したり、柔らかい感じが出ます。
秦基博 – ひまわりの約束
0:32頃〜「つら”いのがどー”っちか〜」で部分的にファルセットへ移行しています。こうすることで地声との緩急が出来、切なさが出るのです。
ヘッドボイス
ヘッドボイスとは、息漏れのない裏声のことを指します。ヘッドボイスは合唱やクラシックが好きな方にとっては馴染み深いですが、一般の方にはあまり知られていない裏声の一種です。特に、女性で高音発声が得意なヴォーカリストはヘッドボイスをファルセットやミドルボイス、チェストボイスなどと巧みに行き交うように用いています。
クリープハイプ – 憂、燦々(ゆう、さんさん)
ここでは男性ヴォーカリストを例にします。人気ロックバンド、クリープハイプのヴォーカリスト、尾崎世界観は高音発声する際にキンキンする甲高い声を用います。あれがヘッドボイスです。
ミックスボイス
ミックスボイスというのは、地声⇔ミドルボイス⇔裏声(ファルセット、ヘッドボイス、場合によってはホイッスルボイスまで)を自由に行き交い、音色を一定にコントロールしながら発声することを指します。
改めて、ミドルボイスとミックスボイスの違いは「ミドルボイス=中〜高音域の声」、「ミックスボイス=ミドルボイスも含めたあらゆる音域・声区を自由に行き交うテクニック」という点です。詳しくは「【え、違うの!?】ミックスボイスとミドルボイスの違いとは?【声区融合】」にて解説しているのでご覧ください。
Superfly – 愛をこめて花束を
Superflyの越智志帆は低音域から高音域まで自由自在に歌いこなすヴォーカリストです。特にHiB以上の中〜高音域をさらさらと楽に歌う様はミックスボイスのイメージを掴むのにうってつけです!
スピッツ – ロビンソン
男性でミックスしている感じが分かりやすいのはスピッツの草野マサムネです。この声を聞けばミックスボイスが「声域」でなくて「歌い方、テクニック」というのが分かりやすいのではないでしょうか。ミドルボイスかもファルセットかも、ヘッドボイスかも見分けがつかないサビの後半の滑らかで伸びやかな高音発声は男性ヴォーカリスト屈指の美しさを誇っています。
まとめ


今回は、歌の表現力について、とりわけ歌唱テクニックの数々をご紹介していきました。
歌の表現力を高めるにはまず、歌詞や楽曲をしっかりと理解することが重要です。その上で、表情や身振り手振り、緩急を付けていくことで感情表現がしやすくなるというお話をしていきました。
そして、それらに加えるとより強力になる歌唱表現・歌唱テクニックの数々を見ていきました。ちなみに、ここで紹介した歌手は皆、表現力の高さに定評がある方々です。
「歌の表現力を付けたい!」と思った方は、ぜひ本記事をじっくりと読み込み、歌手の歌声を聴いてみてください。
良い料理人が美味しい料理の味を知っているのと一緒で、歌が上手い人は「上手い歌手の歌」を知っているべきです。良質な歌手や楽曲を知らずに表現力は身につかないので、ぜひ食わず嫌いせずに聴いてみてくださいね!そして、見よう見まねで取り組むことです。
個々の歌唱表現・歌唱テクニックに関する記事も今後掲載していくので、乞うご期待ください!