「普段どんな練習をしたら良いですか?」
「ライブ前にどんな声出しをされているんですか?」
レッスンをしていると、よく生徒さんからこんな質問をされます。
個人的に最もおすすめな練習方法はやはりリップロールです。
しかし、リップロールはあくまで「色々ある練習方法のひとつ」に過ぎません。
ボイストレーニングは、自身の目的や課題と照らし合わせながら、色々な練習方法を組み合わせながら取り組むことでより高い成果が出るのです。
というわけで、今回はリップロールと同じくらいおすすめな、「タングトリル」の話をしていきます。この記事を読んでぜひチャレンジしてみてくださいね!
タングトリルとは?
タングトリルとは、上顎(上の歯の裏側あたり)に舌を触れさせて、息を吐くことで舌先を「トゥルルル」と振動させる練習方法です。横文字だと「?」が浮かぶかもしれませんが、要は巻き舌のことです。
(動画の3:27頃〜)
タングトリルは、本当はレッスンの中で繰り出したい練習方法ではあるのですが、出来ない方も少なからずいます。なので、私のレッスンでは基本的にあまり登場しません。
とはいえ、リップロールと同様、様々な効果があるので自分のウォーミングアップの時は必ず行っています。
今出来ない方も練習を通して出来るようになるはずなので、根気強く練習してみることをおすすめします!
タングトリルの効果
舌がほぐれる
タングトリルによって舌が振動することで緊張がほぐれるので、ウォーミングアップの効果があります。
また、言葉を発する際、舌によって調音するため、発音(滑舌)が明瞭になる効果があります。
その他にも、リップロールと同様、舌だけでなく表情筋も振動によってほぐれる為、顔の力みが抜けて声の響きが良くなります。
のどがほぐれる
リップロールと一緒くたにされがちなタングトリル。実際にやってみると振動するパーツが異なるため、効果が若干異なります。タングトリルの場合は、舌が振動するため、舌に近い声帯やのど全体がほぐれる効果があります。
音程を正しく歌う練習になる
タングトリルをすることで息を一定のペースで吐けるため、それに連動して声を出した際の音程が安定していきます。音程は声帯の動きによって決まるのですが、声帯の先に位置する唇・口腔の形や力加減によって、声帯も連動して力んでしまうことがあります。
舌がほぐれた状態で、吐く息が安定した状態で声を出すことで、声帯のみで音程をコントロールすることができるようになります。その結果、音程の感覚が研ぎ澄まされ、頭でイメージしたメロディを声で再現できる力がつきます。
高音と低音をなめらかに「つなぐ」練習になる
タングトリルをしながら、地声〜裏声にまたがり発声することによって、リップロールと同様、声を「つなぐ」感覚が身に付きます。タングトリルをすることで力みが少ない良い状態で声を出すことができるため、自分の苦手な音域をきれいに歌う練習になるのです。
タングトリルのやり方
ここからは、注意点やポイントに触れながら3つの段階に分けてやり方を解説していきます。
まずは、声は出さず、息だけを吐き出して舌が震える感覚を掴んでいきましょう。
①口を軽く開ける
まず、口を軽く開けます。ぼぉっとしている時のような表情をするとちょうど良いです。
②舌を上顎(上の歯の裏側あたり)に軽く置く
歯の裏側あたり、と説明する方が多いのですが、実際は「上の前歯の付け根から1cmほど奥に舌でなぞったあたり」がポイントです。わかりにくければ「徹子の部屋」のテーマソングを「ルールルールルルルールルー」と口ずさんでみると、その位置に舌がきます。・・・シュールなところを突いてみました。笑
③鼻から息を吸う
リップロールの記事でも触れましたが、息を鼻から吸うか、それとも口から吸うか、意見が分かれるところです。
私は息を鼻から吸うことをおすすめします。なぜなら、息を口から吸うと口からのどにかけて乾燥してしまい、歌いづらくなるからです。
一方、息を鼻から吸う場合、鼻腔内は湿度が高い為、吸気(息を吸う動き)の際に口やのどの乾燥を防ぐことができるのです。練習においても、こうした細かい点に気をつけてみることで歌の上達が早くなります!
④「トゥルルル〜」と発音するイメージで息を吐く
「ふぅー」とため息を長めにつく位の力感で息を吐き出してみましょう。舌が震えればOKです!
・・・鳴らない!というあなたへ
うまく行かない場合はこちらを試してみてください。
・舌を置く強さを変えてみる
・息を吐く強さを変えてみる
・舌を「べェー」と出して、引っ込めてという動きを5回してみる(舌のストレッチ)
・発音を「ル」から「ラ」へ変えてみる
いかがでしょうか?たくさんの生徒さんのレッスンで軽く触れてはみるものの、色々試してみてもできない方が少なくない印象があります。
私の友人のロシア人やスリランカ人に「(ロシアやスリランカに)巻き舌できない人っているの?」と聞いたことがあるのですが、どちらの国の人も「いないよ!」と答えてくれました。
ロシア人の友人いわく、「否が応でも覚えさせられるから」だそうです。おそロシア。


※ロシア語は発音の際に巻き舌を使うことが多いのです
※ロシア業界(本当にそういう世界があるんです)では、ロシア関連で物騒なことやぶっとんだことがあると、とりあえず「おそロシア」と言っておけば上手くオチがつくという共通認識があるのです
タングトリルを使った色々な練習方法
舌が震える感覚が掴めたら、ここから先は色々な練習方法を試してみましょう。
少しずつ難しくなっていきますが、練習と実際の歌が「つながる」ところまでご案内するので、ぜひモノにしてください!
①音を出しながらタングトリルさせてみる
どんな高さの音でも良いです。あなたにとって出しやすい高さの音を適当に口ずさみながらタングトリルさせます。この際、音程を付けずに「トゥ」と発音し、その流れで「ルルル〜」と舌を震えさせることで音を乗せやすくなります。
慣れてきたら低い音や高い音、裏声でも試してみましょう。
②音階を行き交いながらタングトリルさせてみる
音階練習については、いまどきはボイトレのアプリや動画サイトでの音源が充実しています。動画サイトなどで「発声練習」と検索してみると、なんだかそれっぽい音源が色々と見つかるので、それに合わせて練習してみましょう。
私も、近日中に動画で配信しようと計画していますので乞うご期待くださいませ!
③低音と高音を行き交いながらブルブルさせてみる
こちらは音階を行き交う練習と並行して大丈夫です。離れた音階で行き交うパターンもあるのですが、ここでは「音程は気にせず、低音→高音、高音→低音、低音→高音→低音」の流れで音を出しながらタングトリルする方法を紹介します。
この際、声は「地声の範囲内で」、「裏声の範囲内で」、「地声と裏声を行き交って」の3パターンで出します。イメージとしては消防車や救急車のサイレンです。実際に、サイレントレーニングという名前も付いている練習方法です。
サイレントレーニングとタングトリルと掛け合わせることで、特にのど周辺のパーツの、音程を調整する力を鍛える効果がより高まります。
④メロディーを口ずさみながらタングトリルしてみる
元々ある程度歌える方や、裏声をさらっと出せる方はさらっとここまでたどり着けるかもしれません。
タングトリルで、歌いたい曲のメロディーを口ずさむ。リップロールと同様、これがシンプルにして究極の練習方法です。
これをやることで得られる最高のメリットは、「歌いたい曲を歌う時の身体の良い力感が掴める」ことです。特に高くてのどが締まってしまうようなメロディー、声が裏返ってしまうようなメロディーで試してみるとさらっと口ずさめてしまうことがしばしばあります。
そんなことを言われるとここから試してみたくなるかもしれませんが、基礎が大事なのでイチから順番に試してみてくださいね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?舌が震えない!という方も一定数いるでしょうが、練習してコツをつかむと出来る方も多いです。
タングトリルは、リップロールと同様、独学でやってもあまりデメリットのない練習方法なので、「ボイトレってどんなもんなんだろう?」という方もお気軽に試してみてくださいね!