タルコフスキーと社会主義のはなし

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映画よもやま話をひとつ。タルコフスキーの『惑星ソラリス』と、タルコフスキーを巡る世界の話。

映画史で最も名を馳せる世界的な巨匠の一人ではあるものの、おそらく一般的にはあまり知られていない。タルコフスキーは社会主義体制下の旧ソ連にてイデオロギーに反する「芸術的な」作品を作り続け、体制から弾圧され続けた偉大なる芸術家だ。といっても、ソ連・ロシアについて体系的に学んでいる方でもないとソ連という国においてホンモノの芸術を創ることの偉大さに、イマイチピンとこないかもしれないので今回は体制と芸術について触れてみたい。

まず、ソ連という国は言わずもがな、教科書に書いてある通りの社会主義国家だった。社会主義という思想は、実は芸術や宗教を否定している(と言っても、現にソ連からはあらゆるジャンルの偉大なる芸術が生まれているし、キューバにはボブ・マーリーという偉大すぎるアーティストがいる!)。教科書的な表現をしてみるならば

「イデオロギー、すなわち人間の思想とその体現が「我々」の使命であり、原則的に人間の思想を超越した存在である芸術や宗教は(たとえリアリティがあれど)否定されなければならない存在」

というわけだ。

実際に、社会主義体制下のソ連では「表向きには」宗教の信仰が規制され、「表向きには」、純粋芸術を観賞したり作ったりすることもまた規制されていた。

ソ連という国はとにかく「表向きには」という表現がぴったりな国だった。実際にフタを空けてみると、例えばキワどい体制批判の文書や、そういう要素を秘めていて発禁となった小説(特に有名なのはブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』やソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』あたり)が「サミズダート(地下出版)」という形で人々の間に出回っていた。

これはあくまでアンダーグラウンドな潮流で、「表向きには」、社会主義というイデオロギーを推奨するように仕向ける芸術というものが存在していた。いわば、教育や芸術を啓蒙の「手段」として利用するような考えを「社会主義リアリズム」と言うのだが、それに基づいて作られたのが「はじめにイデオロギーありき」な、「手段としての芸術」だった。

そういう芸術とは全く別の文脈でタルコフスキーは映画を作っていたわけだ。従って彼の映画には宗教を真正面から取り扱ったものもあれば(『アンドレイ・ルブリョフ』)、反体制的な文脈をふんだんに盛り込んだ作品(例えば『ストーカー』)もある(別途取り上げる予定)

・・・・・・

さて。こういうわけで、ソ連で好きな映画を作るというのは民主主義的な国、自由な国で映画を作るするのと事情が異なることがお分かりいただけたと思う。国が資金を供給する形で映画を作っているにもかかわらず、ソ連の反体制派の映画監督は色々なコンテクストを掛け合わせながら、暗喩のような形でこうした代物を作る。そういう意味では、反体制派の映画は60年代のロックやソウルミュージックのようなもので、主義主張がしっかりと存在している。

結果的にはこんなにブッ飛んだ作品を作ってしまったが為に、タルコフスキーはいよいよ当局に弾圧されるようになってしまい、反体制派の旗手として扱われるようになっていったわけだ。最終的にはイタリアで亡くなってしまうのだが、タルコフスキーは長い間、帰ることもままならない祖国へ思いを馳せていた。

タルコフスキーの映画は見る度に印象が変わる。また、映画に対する解釈は多義的で、表現が観念的であることも手伝って、作者が設定した一義的な答えというものがいまいち見当たらない。そんなもんだから映画と対峙する気持ちを持って見ないと、映像も退屈なので寝てしまう(笑)長回しの名人・ギリシャの巨匠、テオ・アンゲロプロスの作品ほど冗長ではないが、寝てしまう。

しかし、睡魔を乗り越えて映像と向き合いきった者のみが得られる、妙な達成感や消化不良感の伴う読後感は他のどんな監督の作品からも得られない。そこには「全米が感動!」とかいう類のものは1mmもない。人とタルコフスキー作品の良さを分かち合う機会はほぼないが、稀にタルコフスキーの「タ」の字でも知っている人と遭遇すると大体通じ合える。世代が違ってもビートルズについて熱く語って仲良くなってしまうのと同様、タルコフスキーを語り始めたらもうキリがない。

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