フランソワ・トリュフォー『緑色の部屋』(1978・仏)

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確かパッケージに「異色の作品」と書いてあっただけあって雰囲気がこれまで見てきた作品とは違っていました。端的に言えば微笑ましいシーンがただの一つもありません。状況設定がドギツい『終電車』でさえ「ふふ。フランス人ってやっぱどこかかっこいいなぁー(遠い目)」と思わせる要素があって、コメディ的な笑いではなくとも会話のシーンを見ていて微笑ましくなることはありました。『華氏451』にいたっては社会風刺を大前提としているので「書物を焼き払う消防隊」という存在自体がギャグでしかなかったですし(笑)

<追記>

渋谷や新宿のTSUTAYAでは、DVD化されていないビデオ版の貴重な映画がレンタルされています。今回取り上げた『緑色の部屋』は、現在販売されているトリュフォーのいずれのDVDにも収録されていません。ビデオか、もしくはミニシアターでトリュフォーかヌーベルヴァーグ特集がある時にでもご覧頂ければと思います!

それにひきかえ本作は全体的にどんよりしています。空気感だけでいえば「どんより界の帝王」(おい)、ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロスの作品に引けを取らない位どんよりしています!

しかし、流石はトリュフォー。どんよりした中でも激情的でなく静かなタイプの愛情を引き出すのが本当に上手い。感動的なストーリーと共に役者に激しい演技をさせて、緩急でもって観客の心を掴むことはプロフェッショナルであればたやすく出来るように思えるのですが、トリュフォーの作品ではそれ以上に日常の些細なワンシーンが輝いています。そして今回の作品に関して特筆すべきはやはり重要な要素となる「ロウソク」でしょう。戦争で荒廃してしまった施設を修復させてもらえるように牧師さんに嘆願し、想いが通じて再建された追悼の場。そこで故人に由来するモノを祀り、ロウソクの炎を絶やさず燃やし続けることで、死者が忘れ去られずに心の中で生き続けるのだとか。

祭壇とロウソク、思い出の品物。こうした「モノ」を通して死者を尊ぶと主人公は考えているようですが、この形式主義崇拝を通して何を訴えかけたかったのか。ある意味でかなり観念的な映画です。きっと好き嫌いが分かれるでしょうし、トリュフォーの作風からしたら嫌いな人の方が多いかもしれない。けれど個人的には映画のトーンが堪らなく素晴らしかったし、文化的背景が全く違う日本の死生観を連想させるものがあって非常に興味深い作品でした。

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