ジャン=リュック・ゴダール「ゴダールの決別」(1993、仏)

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ゴダールは有名どころを一通り見た位でそこまで大好きなわけではないが、DVDのパッケージに「ゴダール映画史上、最難解作品」と書かれていたのを見て、手に取った「パッション」と迷って今回はこちらを選んだ。

さて、ストーリーは(いや、そんなものはないに等しかった!)平たく言ってしまえば自分の旦那に神様が乗り移って情熱的に迫ってくる夫婦関係を描いたお話となっている。

一つ言えるのは、間違ってもヨーロッパ映画なりヌーヴェル・ヴァーグなりゴダールの作品に手を出すに際して本作を最初に選んではいけないということだ。こういうストーリー性に依拠しないタイプの作品にいきなり手を出してしまうと「訳わからなさ」が不快な方向へ向かってしまうからだ。それならゴダールのテンポ感や雰囲気がしっかり出ている他の有名どころを当たった方が楽しめる。

話の腰をバキバキに折ってしまったところで本筋に戻ろうw

まああれだ、そもそも自分の旦那に神様が乗り移ってというアイデアをよくもまあ思いついたと思う。悪魔が乗り移ってみたいなのはあっただろうが。しかもその旦那が妻をたぶらかし、妻は気持ちよくなってしまっている。不倫が愛する人以外の人と関係を持つことだとしたら、果たしてこれを不倫と呼ぶべきなのか怪しい。だって、あくまで形而上の実体としての相手は旦那なのだから。肉体関係と考えれば不倫ではないわけだが、心が交わっている精神的関係と捉えれば不倫に該当するのかもしれない。しかし相手は神様だ、老若男女問わず「あなたが絶対」とされる、神様だ。そんな存在に求められてしまった日にはやはり不倫とも言えないような気がするのだが・・・

旦那に乗り移った神様と妻の関係性だけを考えても簡単に答えを見いだすことは出来そうにない。そんなことを考えている間にゴダール独特の早いテンポ感で、しかもいつもに増して詩的で抽象的で難解な雰囲気で話は邁進していくのだから。

そんな中にもゴダールのしょーもない遊び心が垣間見れるシーンがある。「この世界はあなたが作ったのよね?」という感じの台詞で始まる場面で妻は「じゃあこの蟻もあなたが作ったのよね?」と問いただす。そして旦那はこう答える。「理論上はね」とw

なんだそれ!?「理論上はね」って、あんた神様だろが!と思わずツッコミそうになってしまったww こういうユーモアというかエスプリというのだろうか。私にはどうもゴダールが遊び心でこういう台詞を織り交ぜているように思えるのだ。

話を夫婦+神様の関係性だけに絞って述べてきたが、どうも映画全体に関しては消化が追いついていない。かといって読後感ならぬ「見後感」が悪いわけでもない。よく分からない割に妙な清々しささえ残る。ゴダールは同時期のトリュフォーより分かりにくいので『アルファヴィル』以外は人にオススメしないが、その中でも特にオススメ出来ない作品だということは確かだ。色々見て「ゴダール的」なものを感覚的にストックしてから見ると面白いのかもしれない。

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