ボイストレーナーが選ぶ名曲Vol.2 “You Taught Me How To Speak In Love”(ユー・トート・ミー・ハウ・トゥー・スピーク・イン・ラブ)

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Marlena Shaw(マリーナ・ショウ)と言えば、メロウな歌や演奏が思い浮かびますよね。

今回はMarlena Shawの曲の中でも特に演奏が堪らない、”You Taught Me How To Speak In Love”(ユー・トート・ミー・ハウ・トゥー・スピーク・イン・ラブ)を特集していきます。

Marlena Shaw(マリーナ・ショウ)について

Marlena Shaw(マリーナ・ショウ)は、1942年生まれのアメリカ人の歌手です。

ジャンル的にはジャズに括られていますが、ジャズのみにとどまらずR&Bやソウル、ファンクといったジャンルを縦横無尽に駆け上がっていった伝説のディーヴァです。

1972年にBlue Note(ブルーノート)で初の女性ヴォーカリストとして契約し、今回取り上げる”You Taught Me How To Speak In Love”が収録されている名盤『Who Is This Bitch, Anyway?』(フー・イズ・ディス・ビッチ・エニウェイ)が彼女の評価を不動のものに押し上げました。

2016年に”Marlena Shaw LAST TOUR IN JAPAN”(日本でのラストツアー)と題して来日し話題になりましたが、御年76才(2019年現在)にして現役で歌っており、「現人神」(あらひとがみ)と言っても過言ではない方です。

名盤『Who Is This Bitch, Anyway?』(フー・イズ・ディス・ビッチ・エニウェイ?)について

『Who Is This Bitch, Anyway?』(フー・イズ・ディス・ビッチ・エニウェイ?)はR&B, ソウル(とジャズ)界隈では名盤として名を馳せています。

このアルバムは、発売当時、特にヒットしたわけではなかったもの、時を経るにつれて評価が上がっていった珍しいアルバムです。

やはりこのアルバムの中で最も際立つのは、Robert Frack(ロバート・フラッタ)も歌った”Feel Like Making Love”(フィール・ライク・メイキング・ラブ)です。

とはいえ、私はこのアルバムのナンバーで最も定番である”Feel Like〜”以上に、”You Taught Me How To Speak In Love”が凄いと思えてしまいます。

ソウルフルな歌もさることながら、リズム隊も上モノも最高の音を奏でているのです。

思えばこの時代は、60年代に流行したR&B(というよりもソウル)が洗練されていって、「ニューソウル」と分類されるDonny Hathaway(ダニー・ハサウェイ)やStevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)が台頭した時代です。

私からすればマリーナもニューソウルの系譜に分類される気がするのですが、この時代は同時並行でFunk系の音楽も流行っていました。当時のブルーノートは”Jazz Funk”というくくりでこっち系のアーティストを囲っていたこともあり、マリーナは今でも「ジャズ畑の人」というのが一般的な認識です。

“You Taught Me How To Speak In Love”(ユー・トート・ミー・ハウ・トゥー・スピーク・イン・ラブ)について

“You Taught Me How To Speak In Love”は1975年に、名門ジャズレーベル・Blue Note(ブルーノート)から発表した3作目(ライブ盤を含めると4作目)のアルバム、『Who Is This Bitch, Anyway?』(フー・イズ・ディス・ビッチ・エニウェイ?)に収録されています。

曲名を和訳するとすると「あなたが私に愛を教えてくれた」と言うのが近いかと思います。これは端的に和訳するのが難しい・・・。

“You Taught Me How To Speak In Love”(ユー・トート・ミー・ハウ・トゥー・スピーク・イン・ラブ)の和訳

「あなたが愛の伝え方を教えてくれた」、これをもう少し噛み砕いていくと

「あなたが私に愛がこめて接してくれたから「愛」が何なのか分かった。それは言葉じゃなくて目線であったり態度であったり・・・」、この曲の内容を端的に示すとこういう内容となります。

次に、Aメロ〜Bメロをざっと訳すとこのような和訳になります。

私はどうやって「あなたを愛している」(スペイン語)と言うか知っている
I know how to say ‘Te amo’

私はどうやって「あなたを愛している」(フランス語)と言うか知っている
I know how to say ‘Je t’aime’

愛なんて込めずにそんなことを口にしていた
I’ve used a thousand phrases, without any love in them

でも目から、いつも私がこれまでに聞いたことない言葉が溢れてくる・・
But your eyes, always spring things I’ve never heard before

もう言葉なんて要らないの
Now I don’t need words any more

(”You Taught Me How To Speak In Loveより引用”)

Bメロの詩的な表現が70年代独特の空気感を醸し出しています。

言葉は口から出てくるはずなのに、そうではなく目から溢れ出てくる、愛に満ちた言葉が。

つまり、この曲に出てくる”speak”は、言葉を発しているのでなく、態度を示しているのです。
言葉じゃなく、いや、言葉に出来ない「愛」を「あなた」からたくさん受け取るうちに「言葉なんてもうどうでもいい」と、溶ろけている甘ーい状況を描いているわけです。

続いて、サビも見ていきましょう。

あなたが愛の伝え方を教えてくれたから
Oh cause you taught me how to speak in love

あなたが口づけで愛の伝え方を教えてくれたから
Your kisses taught me how to speak in love

私が知っている最高に甘い「言葉」を
The sweetest language that I know

あなたが愛の伝え方を教えてくれたの
Oh you taught me how to speak in love

あなたが愛の伝え方を教えてくれてからね
And since you taught me how to speak in love

もう言わなくても伝わることを
The things you’d never have to say

でも私のことを好きって言って・・
Oh say you love me so

(”You Taught Me How To Speak In Loveより引用”)

まあーーー甘い!甘々です。

ソウルミュージックの醍醐味の一つは「溶ろけてしまうような甘ったるい歌詞やメロディ、演奏」です。

字面だけを読んでいくと「あなたが愛のある言葉を教えてくれた」とでも言えるのかもしれません。
先ほども触れた通り、「愛」は視線であったり態度に現れて、言わなくてもそれがあると判るようになってしまったと。

こんな甘ったるい詞を情緒たっぷりに歌うマリーナ・ショウに加え、当時絶頂の名ギタリストであるDavid T. Walker(デビッド・T・ウォーカー)、Larry Carlton(ラリー・カールトン)をはじめとする一流のミュージシャンがメロウな演奏をしているわけです。

当時の凄腕プレイヤーが集結して制作された楽曲

マリーナの来歴や名盤『Who Is This Bitch, Anyway?』の話をしたところで、いよいよこのサウンドを奏でたミュージシャンに焦点を当てていきます。

一体どこのどんなプレイヤーがこんなにイカした演奏をしたのかと言うと・・・

Ba:Chuch Rainey(チャック・レイニー)

Dr:Harvey Mason(ハービー・メイソン)

Gt:David T. Walker(デビッド・T・ウォーカー)、Larry Carlton(ラリー・カールトン)

Key:Larry Nash (ラリー・ナッシュ)

「あ、なんかすみませんでした。。」

70年代にブイブイ言わせていたフュージョン系の一流ミュージシャン達が集結して制作されたのです。

Larry Carlton(ラリー・カールトン)とB’zの松本さんはコラボしている

それぞれの活躍についてはまた別の機会に特集するとして・・・メンバーの中で日本でも有名なのはやはりギタリストのLarry Carlton(ラリー・カールトン)です。

Larry Carlton(ラリー・カールトン)といえば、ギターフリークにはおなじみの”Room 335″が有名ですね。

 

B’zの松本さんと共作した”TAKE YOUR PICK”(テイク・ユア・ピック)がグラミーのインスト部門にノミネートされたのは2010年のことです。

松本さんはB’zのギタリストとして、日本で最も成功したロックギタリストと言っても過言ではありません。
そんな松本さんですが、実は若かりし頃はジャズに傾倒していたのです(というかソロでもB’z名義でもそれっぽいフシは常にあります)。

そして、ラリーはフュージョンというジャンルの代名詞と言える位、一時代を築き上げた人です。

そんな人と共作でアルバムをリリースするなんて偉業にもほどがあります。

ラリーVSデヴィッド!!冴え渡るカッティングギターとオブリガート

私はギターも弾くのですが、カッティング(チャカチャカ聴こえる演奏)やオブリガート(演奏や歌に絡むような即興)が美しい楽曲が特に好きです。

“You Taught Me How To Speak In Love”を聴きながら耳を澄ませると、左側からはラリー・カールトンのギターが聴こえてきます。
そして、反対側から聴こえてくるのがデヴィッド・T・ウォーカーのギターです。

デヴィッド・T・ウォーカーが奏でる音色は、ラリー・カールトン以上に「唄っている」ように聴こえます。

R&BのギタリストといえばやはりCornell Dupree(コーネル・デュプリー)ですが、デヴィッド・T・ウォーカーも歌以上にギターで歌うことに長けています。

早弾きできればいいってもんじゃないんです。

大事なのはいかに「唄っているか」であったり「グルーヴのある演奏をしているか」です。

この曲を聴くと、マリーナ・ショウや演奏陣の音に絡みつくようなギターを、ラリーとデヴィッドが違うアプローチで弾いているのが印象的ですね。このアルバムにおけるラリーとデヴィッドの絡みは本当に堪りません。

まとめ

“You Taught Me How To Speak In Love”の何が魅力的かと言うと、音楽全体がこれ以上にない位「エロい」点です。

歌に絡みつくような勢いで、ギターが甘い音色で押しては引いて、押しては引いて・・・。

ベースやドラム、鍵盤も同様で、繰り出す音色がとにかく有機的で生々しいのです。

今時のR&Bは徐々にシンプルになりつつある一方、70年代のこの手の曲はかなり複雑なんですよね。

歌詞も今みたいに愛だの恋だのばかり言っているわけでなく、「思想の表現の手段」でもあったので、環境問題や人種差別、アイデンティティの危機といったセンシティブな問題を扱った曲が多かったのが特徴です。

どちらの時代の曲にもそれぞれの良さがありますが、私はやはり過去へ過去へと回帰してしまいます。
そこには、技術ではどうにも出来ないフィーリングやソウルが渦巻いているのだから。

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