「呪怨ボイス、出来るようになりました!」
「なんかあの声、洋楽でよく聞くような・・・」
こんにちは!ボイストレーナーのmassuです。
歌にはたくさんの歌唱表現があります。カラオケの採点機能で見かけるしゃくり、フォール、ビブラート、こぶしetc…。
今回取り上げるのはエッジボイス(ボーカルフライ)です。エッジボイスは以前、別記事にて基礎練習のひとつとして取り上げました。今回は、エッジボイスが実際の歌でどのように用いられているのかをお伝えしていきます。
聴くだけでも楽しいのですが、実際の歌でマネしてみることで表現力の向上につながります。ぜひ試してモノにして、他の曲を歌う時にも取り入れてみましょう。
エッジボイスとは
エッジボイスとは、喉の奥でブツブツと弾けるようなざらついた声のことです。声帯を閉じた状態で発声することで、ホラー映画で聞き覚えのある、ちょっと気味の悪い声になります。
そう、映画「呪怨」で「あ″あ″あ″あ″あ″・・・」という声が出てきます。あれがエッジボイスなのです(この映像、見た目は怖いですが面白いのでぜひフルで見てみてくださいね!)
エッジボイスが用いられている楽曲ー洋楽編
「呪怨ボイス」ことエッジボイスは、単品で取り出すとちょっとアレですが(笑)、実際の楽曲の中で多用されています。洋楽邦楽問わず、ジャンル別にアーティストの楽曲を取り上げてみるので、エッジボイスが歌にどんな印象を与えるのかを確認していきましょう。全ての曲は、すぐに該当箇所が聴けるよう設定しています。
※カテゴライズはあくまで私の主観ですのでご承知おきください。
洋楽R&B
Justin Bieber – Love Yourself
Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)の”Love Yourself”の歌い出し、”For all the time that you〜”の”For”の頭でエッジがかかっています。のっけからエッジボイスが入ってくることで、歌が切ない感じ、哀愁漂う感じに聞こえます。
Ariana Grande & John Legend – Beauty and the Beast
Ariana Grande(アリアナ・グランデ)とJohn Legend(ジョン・レジェンド)がコラボした”Beauty and the Beast”のサビ、”Ever just the same〜”の”Ever”の頭にエッジがかかっています。
“Beauty and the Beast”は、他のフレーズでもエッジボイスを歌唱表現として多用しています。
もしこれがない状態で”Ever just the same〜”と歌ったらどんな印象になるでしょうか?切ない感じや色っぽい感じ、恋い焦がれる感じ・・・聞き逃してしまいがちですが、色々な感じを引き立たせる歌の大事なエッセンスとなっています。
洋楽ロック
Aerosmith – I Don’t Want to Miss a Thing
Aerosmith(エアロ・スミス)のSteven Tylar(スティーブン・タイラー)は長いキャリアの中でエッジボイスを多用するヴォーカリストです。日本でもおなじみ、映画『アルマゲドン』の主題歌でもある”I Don’t Want to Miss a Thing”では、サビの”I don’t wanna close my eyes〜”の”I”にエッジボイスがかかっています。R&B系のアーティストとはまた違った雰囲気があってカッコいいですね。
Journey – Faithfully
Journey(ジャーニー)のSteve Perry(スティーブ・ペリー)の後継者となっているArnel Pineda(アーネル・ピネダ)は、”Open Arms”と肩を並べる名バラード”Faithfully”で時々エッジを挟んできます。もう本当にいい曲!
洋楽ポップス
Mariah Carey – All I Want For Christmas Is You
Mariah Carey(マライア・キャリー)のクリスマスソング・”All I Want For Christmas With You”の歌い出し、”I just want you never know〜”の”I”の音にエッジがかかっています。マライアもエッジを結構使うイメージがあります。
エッジボイスが用いられている楽曲ー邦楽編
邦楽の場合は、私のイメージではR&B系の音楽が好きなアーティストがエッジボイスを用いている印象があります。特に帰国子女系のアーティストの曲を聴くとよく入っています。
邦楽R&B
RYUJI IMAICHI – ONE DAY
三代目J Soul Brothersのヴォーカル・今市 隆二さんのソロの曲”ONE DAY”はのっけからエッジが入る入る。ミディアムバラードな曲調がそうさせるのかもしれませんが、やはりメロウな曲とエッジの相性は最高に合うのです。
邦楽ロック
ONE OK ROCK – Heartache
One Ok Rockのヴォーカリスト・Takaさんは、もう隙あらばエッジを入れると言っても過言でないくらいエッジボイスを多用しているのでフレーズには言及しません。本人の歌の代名詞になっていますね。
邦楽ポップス
BENI – 恋焦がれて
英語で色々な楽曲をカヴァーしているBENIさん。エッジボイスは曲の歌い出しで用いられることが多いのですが、この”恋焦がれて”の「待ち焦がれときめいて〜yeah」というフレーズの途中で、フェイクの途中でエッジボイスが入ってきます。
福山雅治 – 虹
福山雅治さんは弾き語りやライブの音源を聴くと、スタジオ盤(原曲)よりもクセが強くて、エッジボイスも多用しています。特に、歌い出しと語尾でエッジを入れる傾向があります。
福山さんの楽曲のメロディラインの特徴として、歌い出しは低音が多く、エッジを入れることでその低音を出しやすくなることもあってそうしているのでは、と推測しています。
Aimer – 蝶々結び
Aimerさんは息もれ気味なハスキーな声や大きく聞こえる息づかいが特徴のヴォーカリストです。サビの歌い出しの部分でエッジを入ってきます。今回取り上げたアーティストの中でも特に息の使い方が特徴的なので、もしAimerみたいな感じで歌いたければ「息1割多めに声を出して口呼吸、マイクはほぼ口づけで」を心がけるとこの感じに近づきます。
まとめ
エッジボイスのこのように、ジャンルや年代を問わず多用されています。ソングライター系のアーティストやブラック系、ブラック系に影響を受けているアーティストが多い印象があります。
歌唱表現の際にエッジを入れることで、切ない感じ、悲しい感じ、色っぽい感じetc…喜怒哀楽の「哀」に近いニュアンスを出すことが出来ます。
エッジボイスは、発音(母音・子音)や音程によって出しやすさや「あんばい」が異なります。まずはこちらの記事を参考にのどをカラカラと鳴らせるようにし、実際の曲からワンフレーズだけでも取り出して練習してみると「表現の引き出し」として使えるようになっていきます。
また、エッジボイスは声帯を締める動きであるため、語尾の処理や歌い出しのニュアンスのコントロールにも直結します。今回取り上げたアーティストは、いずれもエッジボイスに限らず語尾の処理、歌い出しやブレス、声と息の比率etc…息を活用した表現に長けている方々です。
「歌の良し悪しは最初のワンフレーズで分かる」と言いますが、本当にその通りです。プロは息づかいをも表現の手段として活用しているのです。また別の機会に息づかいについての記事を書くので楽しみにして頂ければと思います!