

こんなお悩みの方、多いのではないでしょうか?
声が裏返ってしまう、声が通らないといった原因はずばり!
「声帯を上手く閉じれていないから」(この動作を「声帯封鎖」と言います)
です。
あの、声帯ってなんですか?
と思ってらっしゃる方も多いはずです。
というわけで、今回は声帯とは何なのか?その役割や仕組みを説明していきます。
その上で、良い声を出すために必要である、声帯を上手く閉じる感覚や練習方法について説明していきます。
- そもそも声帯とは?声帯を閉じるとは?
- 声帯を閉じると起こる効果
- 一番簡単な声帯を閉じる方法
- 声帯を閉じる感覚
- 声帯を閉じる練習方法
この記事を読んで声帯の役割や仕組みを知ることで、声帯の正しい動きや閉じ方が分かるようになります。
そして、声帯を閉じる練習をすることで声が裏返らなくなったり、声の通りが良くなっていきます。
ぜひ声帯を閉じる感覚をつかんで良い声を出せるようにしていきましょう!
ちなみに、腹式呼吸ができ、喉を開く感覚がつかめていると、声帯を閉じる感覚や動かし方も早くつかめるようになります。腹式呼吸や喉を開く感覚もぜひ合わせて練習してみてくださいね。
声帯を閉じるとは?
そもそも声帯とは?
声帯とは、喉の奥に位置する2枚の粘膜のことを指します。
以下の動画で、映像の中心部にある2対のパーツが声帯です。
大きさは男性で2〜3cm、女性で1〜2cmと非常に小さいパーツです。また、医学的にはあくまで筋肉ではなく「粘膜」でとされており、声帯を直接コントロールすることは出来ません。
しかし、声帯の周囲には小さな筋肉がいくつも存在していて、私たちはその筋肉を無意識にコントロールすることで声帯を動かし、日頃声を出すことが出来るのです。
ボイストレーニングをすることで、声帯周辺の筋肉をコントロールする感覚が養われ、発声する際に声帯の開閉の度合いをコントロール出来るようになるのです。
声帯を閉じることで声が生まれる!
声帯は、息を吐くことで高速で開け閉じ(※)を繰り返します。息が声帯を通過する際に生じる音が、声の元となる音色なのです(喉頭原音/こうとうげんおん)。
その音が身体のあらゆる部位に共鳴することによって、日頃私たちが耳にする声が作られるのです。
ちなみに、声帯は呼吸する時は開いた状態になり、声を出す時や飲食をする時は閉じた状態となります。
(※厳密には、振動と説明する方が適切なほど、超高速で開閉を繰り返す動きをします)
- 声帯:喉の奥に位置する2枚の粘膜のこと。喉仏の奥に収納されています。
声を出す上で一番の要となるパーツです。 - 喉頭原音(こうとうげんおん):吐く息が声帯を通過する際に発声する、声の元となる音色のこと。
声帯を閉じるとは?(声帯封鎖)
声帯を閉じるとは、声帯が、すなわち2つの粘膜が発声時にくっついている状態のことを指します。このことを「声帯閉鎖」といいます。
声帯は周辺の筋肉の力感や、首や喉の力感に連動して「開き気味」だったり「閉じ気味」だったりすることもあります。
歌う際は声帯の開き具合をコントロールすることで、優しく歌ったり力強く歌ったりといった表現が出来るのです。また、会話の際にも声帯をコントロール出来ると、話し声に緩急が生まれ、あなたの話す内容が相手にとって頭に入ってきやすくなるのです。
- 声帯閉鎖:発声時に声帯が閉じた状態のこと。
声帯を閉じると起こる効果
声帯を上手に閉じることが出来ると、声に関するあらゆる悩みが少なからず改善されていきます。
喉が疲れにくくなる
声帯を閉じることで、長時間話したり歌ったりしていても喉が疲れにくくなります。声帯は、強すぎず弱すぎず、正しく閉じることによって最も負担のない状態で声を出せるように出来ているのです。
あまり知られていませんが、実は歌うよりもしゃべる方が声帯の負担が大きいのです。なぜなら、ひそひそ声や息漏れ声で話そうとすることで、弱く閉じた状態の声帯に息が強く通って負担がかかるからです。
もし、話すときにひそひそ声や息漏れ声になってしまうクセがあったら、声帯を強めに閉めることを意識してみましょう!声帯をしっかり閉じることで声の息漏れ感がなくなり、症状が改善していきます。
芯のある声を出せるようになる
芯がなくて弱々しい声、通らない声の方は声帯の閉まり具合が弱めな傾向があります。
声帯を閉める感覚をつかみ、声帯をより強く閉めながら発声出来るようになると、芯のある声が出せるようになります。
腹式呼吸を覚えても歌声や話し声があまり変わらないなと思う方は、声帯の閉じ具合に注目して練習してみることをおすすめします!
大きい声を出せるようになる
声帯を上手く閉じることで、吐く息がより強く声帯を震わせ、大きな声を出せるようになります。
呼吸と声帯、そして発声のメカニズムを水道の蛇口とホースに例えて説明しますので想像してみてください。
まず、吐く息は水道から蛇口をひねると出てくる水です。水をどこかにまくには、ホースの先端を指先で持ってコントロールしますよね。これが声帯の役割です。
ホースを使って水をまく際に、ホースの先端をしっかりと強く握ることで水流が強くなり、遠くまで水をまけますよね。
つまり、声帯を適切な力加減で閉じることによって、より大きい声、遠くまで伸びる声を出すことが出来るのです。
色々な声色を出すことが出来るようになる
我々の声色は以下の4つの要素が相まって決まります。
- 吐く息
- 声帯の閉まり具合
- 身体の共鳴の仕方
- 発音(調音)
声帯を閉じる具合をコントロール出来るようになると、柔らかい声、ハスキーな声、パワフルな声のような、色々な声色を出すことが出来るようになるのです。
MISIA『アイノカタチ』に見る声色の使い分け
2018年の紅白歌合戦や日本レコード大賞で圧巻の歌唱力を見せつけて話題となったMISIAさん。
MISIAさんは力強く歌うことも出来ればふわっと、さらっと力感なく歌うことも出来ますよね。
実はその秘密は、MISIAさんの声帯の使い方にあるのです。
ここでは『アイノカタチ』を題材に、どんな声色のバリエーションがあるかを見ていきましょう。
まず、0:09〜のAメロにおいて、歌い出しはささやくように優しい感じで歌っています。この時、声帯はさほど強く閉まっておらず、ほんの少し息漏れ気味な状態で歌っています。
次に、0:50〜過ぎからのサビにおいて、かなりのハイトーンを比較的強めに声帯を閉じた状態で、それなりに力強く歌っています。
ただ、サビの中では一部力感を抜いてふわっとした音色で歌っているところがありますよね。この時、声帯の閉まりを緩めて歌っているのです。
このように、Aメロとサビだけでもざっくりと3種類(本当はもっと細かいです!)の声色を巧みに使い分けて歌っているのです。
MISIA、Superfy、絢香・・・憧れの歌声の秘密とは!?
MISIAさんの声はパワフルなイメージがあるかもしれませんが、色々な歌手と相対的に比較してみるとむしろ柔らかめな声の部類に入るのではないでしょうか。
他にも、たとえばSuperflyの越智志帆さんや絢香さんも、かなりパワフルな声に聞こえますが、2人とも基本的には力で押して歌うタイプのスタイルではありません。
ですので、カラオケでMISIAさん、Superflyや絢香さんの歌を歌うとき、大事なのは
「声帯の閉じ具合を上手くコントロールして柔らかい声を出すこと」
です。
これが柔らかい声が出せるようになると、パワフルに発声することもより楽に出来るようになります。
彼女たちのように、声帯を閉じる感覚を駆使することで、柔らかい声でも強い声でも歌えたらきっと気持ち良いですよね!
3ステップで出来る!一番簡単な声帯を閉じる方法
ここから声帯を閉じる感覚や日々出来る練習方法をお伝えします。ぜひ練習を続けて声帯を閉じる感覚を養っていき、気持ちよく歌えるようにしていきましょう!
吐息を声にしていく練習
声帯の仕組みや、声帯を閉めることで色々な効果があることを学んできました。次は、いよいよ声帯を閉じる方法をお伝えしていきます。
手順はたったの3ステップです。
- 「ハーーー」と、声を出さずに息だけを吐く(3秒×5回)
- 「ハーーーァァー」と、息を出しながら少しだけ声を混ぜていく(3秒×5回)
- 「アーーー」と普通に声を出す(3秒×5回)
まず、冬の寒い外出先で待ち合わせをしているシチュエーションを想像してみてください。
そこで、冷たくかじかんだ手を暖めるイメージで、「ハーーー」と息を吐いていきます。
この息の吐き方に慣れてきたら、引き続き息を吐きながら少しずつ「アー」と、声を混ぜていきます。
声帯を閉じる感覚とは?
すると、「ハーーー」という息に「アー」の声が混ざった瞬間、喉のあたりが振動する感じがします。
これが声帯を閉じる感覚です。
喉に意識を集中することで少しずつ声帯を閉じる感覚がなじんでいきます。
この感覚が敏感になることで、声色をコントロールしやすくなり、歌の表現力が上がります。
声帯を閉じる感覚をつかんだら、ここからは声帯を閉じる練習方法を実践してみましょう。
少しずつ、声帯の閉じ具合をコントロールしながら声を出せるようになっていきます。
声帯を閉じる練習方法
ここで重要なのは「声帯の閉じ具合」をつかむことです。
声色は「声帯の閉じ具合」によって変化するため、この感覚をつかむことで様々な声色で声を出せるようになっていきます。
息を止めたり吐いたりする練習
これは、声帯がピタッと塞がる感じや開く感じをつかむ練習です。
- 「アーーー」と声を出す
- 「アーーー」と声を出している途中でピタッと止めてみる(3秒×10回)
- 再び「アーーー」と声を出す(3秒×10回)
まず、息を止めることで声帯が閉まりきった状態になります。
そして、再び声を出す際、今度は声帯がパカっと開く感じがしませんか?
息の吐き方を変えてみることで、声帯が閉まる感覚や開く感覚がお手軽につかめる練習方法です。
エッジボイス
エッジボイスとは、平たくいえば映画『呪怨』で話題となったあのガラガラ声です。
エッジボイスは、仕組み的には声帯を閉じた状態で出す声で、「閉鎖筋」と呼ばれる声帯周辺の筋肉を動かす感覚を鍛えるのに適した練習です。
まず、「アーーー」と声を出しながら、徐々に低くしてみましょう。
出せないほど低い低音に差し掛かると「ガラガラ」とした声が出始めます。
この時、ゆっくり息を吐いていくのがコツです。
エッジボイスの詳しい効果ややり方、エッジボイスを用いた練習方法は下記の記事にて詳しく解説しています!
- エッジボイス:声帯を閉じた状態で出すガラガラした声のこと。
- 閉鎖筋:声帯を動かす際に稼働する、声帯周辺の筋肉の総称のこと。
息漏れ声の練習
声帯を閉鎖させる感覚に慣れてきたところで、今度は声帯を開き気味にする感覚を養う練習を紹介します。
- 「アーーー」という声を出しながら、10%位ほんのりと息を混ぜていく
- その割合を20%、30%、40%と増やしていく
声を出さずに呼吸をしている時、声帯は開いています。
声を出している時、声帯は開閉運動をしているのですが、この際に息漏れ声を出していくことで声帯が開き気味の状態で開閉運動するようになります。
この息漏れ気味な声がいわゆる「ウィスパーボイス」です。
あの歌手の声はウィスパーボイス!?
ウィスパーボイスが出来るようになると、特にバラード系の曲やゆったりした曲で情緒あふれる表現が出来るようになります。
最近の邦楽の女性アーティストは声帯の閉鎖が緩めな方が目立つイメージがあります。
Uruさんの歌声はどこか儚げというか切ない感じに聞こえることが多いのですが、声帯が緩めに閉まっているため、息漏れ気味の声になっているのがそう聞こえる要因のひとつと言えます。
ONE OK ROCKのTAKAさんは、おそらく世間的にはかなりパワフルな声を出すヴォーカリストというイメージがあるかと思います。
しかし、じっくり声を聴くと柔らかく、息漏れ気味に歌うことに非常に長けているのです。
シャウト気味になるほど力強い声から、出だしの、声帯の閉鎖が緩やかな状態の声まで、色々な声の引き出しを兼ね備えているのがTAKAさんの特徴です。
声帯を閉じ具合を変えながら声を出す練習
息漏れ気味な声の感じがつかめてきたら、今度は喉の開き具合と声帯の閉じ具合をそれぞれコントロールできるようにしていきます。
これに関しては、ボイトレ的に練習するというよりも、
歌手のフレージング(歌い回し)をものまねしていく方が楽しみながら取り組むことが出来ます。
今回の記事ではMISIAさんを中心に、UruさんやTAKAさんの声の特徴を少し紹介していきました。
歌手には必ず声に特徴があり、それを確認するひとつの指標が「声帯の締め具合」です。
声帯は、強く閉められるに越したことはないのですが、強く閉めすぎると喉を痛める原因となってしまいます。
かといって、今回取り上げた歌手の歌声を聴くと
「閉まってない方がカッコよくないか!?」
と思われたかもしれません。
最終的には好みの問題ではあるものの、私としては
「強くも弱くも閉められる、コントロールできる」
のが理想だと考えています。
まとめ
声帯を閉じる感覚、つかめましたでしょうか?
声帯を閉じることで、大きい声を出せるようになったり、声が通るようになっていきます。
そして、その閉じ具合をコントロール出来るようになってくることで、歌の表現力がアップします。
今回は、いつも以上に私の普段のレッスン色を出した解説をしてみました。
やっぱり、メカニズムがどうこうだけじゃなく、
「プロのアーティストはどうやってその技術を実践しているのか」
を知ることで
「こんな感じで歌えるようになるなら練習したい!」
とやる気が出るものです。
世間でパワフルなイメージがあるヴォーカリストの多くは、実はしなやかに柔らかく声帯を使っています。
声帯の閉め方をつかんでさらに声を良くしていきましょう!