音痴には「感覚性音痴」と「運動性音痴」の2種類があります。
どちらも「音を取ろうとするとズレてしまう」という点では同じなのですが、その原因や治し方は異なります。
今回は、「感覚性音痴」と「運動性音痴」の違い、それぞれの原因と治し方について解説していきます。
感覚性音痴と運動性音痴、どちらに当てはまるのかチェックする方法もお伝えするので、音痴の原因を知って対策していきましょう。
感覚性音痴と運動性音痴の違い
音やリズムを正しく捉えられるかどうか
感覚性音痴と運動性音痴の違いは、「音やリズムを正しく捉えられるかどうか」です。
「私は音痴なのでカラオケが苦手で・・・」
という方が多いのですが、音痴には種類があって、原因が異なります。
結論から言って、自分のことを音痴だと思っている方のほとんどが勘違いをしています。
そして、あなたの音痴はほとんどの場合、個人差はあれど治ります。
音楽や歌うことを英語にたとえて音痴を考えてみると・・・
ここでは、音楽や歌うことを英語にたとえて考えてみましょう。
- 音やリズムを正しく捉えられるか≒「英語を聴いて理解することができるかどうか」
- 歌を正しい音やリズムで歌うことは≒「英語を話せるかどうか」
- ピアノを使って片手でメロディを弾けること≒「英語を書けるかどうか」
この中でひとつ、要素が欠けていますよね。「英語を読むことができるかどうか」です。
「英語を読むことができるかどうか」は以下の条件によります。
- アルファベットを文字として捉えることができるかどうか
- 単語を意味のあるものとして捉えることができるかどうか
- 文法を理解して、言葉の繋がりを「意味のあるもの」として捉えることができるかどうか
これを音楽でたとえると、「ドレミファソラシド」の音の高低であったり、発している音の長さやタイミングやつながりを捉えることができるかどうかということになります。
なんだか一筋の光が見えた気がしませんか?
だって、曲を聴いたらそれが何の曲で、高かったり低かったり、リズムが早かったり遅かったり認識できる人がほとんどなのですから。
要するに、音痴というのは、音楽の要素のどこをどれくらい捉えられるかの「度合い」で判別されるべきなのです。
英語やスポーツと一緒!?「やり方」を知れば音痴は治る
「英語しゃべれない・・・って言うけど単語くらいは多少読めます!」
「英語しゃべれないけど、ハワイに1週間行ったときにあいさつくらいは交わしてた!」
なんて方がほとんどなのです。
日本人が英語を話せない理由は、日本に住んでいる限り英語を使う機会は限られますし、学校や身の回りの人から見える形・見えない形でしゃべり方を学んでいないからです。
「実は音やリズムを正しく捉えられる力がある」のに、その方法を知らないから極度の音痴だと勘違いしていて、歌うのが苦手になってしまっているという方が多いのが現状なのです・・・。
もう薄々気づいていますよね?
どんな人にも得意なことというのがあって、それは頑張ってきたことかもしれないし、自然にできていたことかもしれません。
音痴は、音が取れない原因を知って対策することで確実に改善できるのです。
あなたはどっち?感覚性音痴と運動性音痴、どちらに当てはまるのかチェックする方法
チェック項目は以下の3つです。恥ずかしいかもしれませんがこれらをスマホのボイスレコーダー、もしくはお手持ちのレコーダーで録音してチェックみてください。
- 聴いた音と同じ音を出せる
- 「ドレミのうた」を歌える(キーはどんなキーでもOKです!)
- 曲に合わせて手拍子でリズムを取れる
いかがでしたか?参考までにかわいらしい「ドレミのうた」を載せてみました。
チェックしながらズレている感じはありましたか?
あるいは、録音したものを聴きながら、音やリズムがズレていましたか?
「ズレてる!」、「いや、合ってる!」という方は運動性音痴の疑いがあります。
もしくは、本当に合っていて問題ないかもしれませんね。
「あの・・・どう歌ったか、どうリズムを取ったか分からないです」という方は感覚性音痴の疑いがあります。
感覚性音痴とは?
正しい音やリズムの違いが分からない、自分の声がズレていることに気づかない
感覚性音痴とは、正しい音やリズムを認識することができないことを指します。
感覚性音痴は、先のように英語で例えると
“I have a pen.”(私はペンを持っています)
という文章や言葉を、ただの文字や音の羅列のように認知してしまう状態です。
曲を聴いても声が低いとか高いとか、そういった情報が認識できなければ、自分の声でそれと同じ音を発することは難しいですよね。
このタイプの音痴の矯正は後ほど紹介する「運動性音痴」の矯正よりも難しいです。なぜなら、「新しい概念(ものさし)を意識に定着させる」ところから始まるからです。
ただ、それでも以下の練習を続けることで改善されるのでご安心ください!
感覚性音痴の治し方①チューニング
感覚性音痴を治すには、「概念を意識に定着させる」ことが必要です。
私のレッスンでは「チューニング」というトレーニングを行うことで、多くの生徒さんの音痴の矯正に成功しています。
まず、「ド」の音と「ミ」の音を、できればピアノで出します。
「ド」の方が「ミ」より低いということを知識としてインプットするところからがスタートです。
次に、正しい音を発することができる人と一緒に、もしくは「チューナー」という道具やアプリを使って「ド」と「ミ」の音を出します。
はじめに出した音が、「ド」や「ミ」の音より高いか低いかを判定してもらい(チューナーの場合は針や目盛りが左右どちらかに触れる)、それから自分なりに音を調整していきます。
この練習を繰り返していくことで、自分の認識の中に「音の高低」という概念が形成されていきます。
英語の習得に置き換えるならば、アルファベットを覚えることに似ているかもしれませんね。
感覚性音痴の治し方②イヤートレーニング(聴音)
先のチューニングは、声を出しながら頭の中に「音の高低」の概念を形成していくトレーニングでした。
それに対して、イヤートレーニングとは「音の聴き方」を知ることで、頭の中に「音の高低」の概念を形成していくトレーニングです。
まず、ピアノで「ド」の音を出し、次に「レ」の音を出します。
次に、「ド」の音を出してから「ソ」の音を出します。
このような組み合わせを1セットとして、「どちらの組み合わせの方が音が離れている感じがするか」、耳と目で追いながら訓練していくのです。
イヤートレーニングを練習することで、やはり頭の中に「音の高低」という概念が形成されていきます。
こちらも英語の習得に置き換えるならば、penとpencilを見せ比べて、それぞれ「ペン」と「えんぴつ」なんだと覚えていくプロセスに似ています。
運動性音痴とは?
正しい音やリズムの違いは分かる!けれどそれを再現するのがニガテ
運動性音痴とは、正しい音やリズムを断片的に、あるいは完全に認識することができるけれど、声を発する際にズレてしまうことを指します。
運動性音痴は、先のように英語で例えると
“I have a pen.”(私はペンを持っています)
という文章や言葉に対して
・(”I have a pen.”と言われて)「あー「私はペンを持っています」って言っているのね!書いてって言われたら書けないけど・・・」
・(”I have a pen.”という文章を見て)「あー「私はペンを持っています」っていう意味ですね!英語で言えないけど読む分には・・・」
といった形で「なにかしらの形で、ある程度理解出来るけれど「やれって言われたらムズカシイ・・・」」という状態です。
このタイプの方は「リズムがニガテなのか」、「音を聴くのがニガテなのか」、「発声や共鳴(身体を使うこと)がニガテなのか」のどれかに該当します。
ということは、それぞれのパターンに対する対策を打つことで今、あなたが想像出来ないくらい音が取れるようになります。
見分け方については、それぞれの対策の中でお伝えするのでチェックしてみてください。
運動性音痴の治し方①リズムトレーニング
リズムトレーニングとは、音楽を聴きながら、あるいは歌いながら手や足などを動かしてリズムに乗る練習のことです。
とはいえ、声を出しながら、あるいは音楽を聴きながらリズムに乗るのがニガテな方が多いと思います。
まずは自分なりのペースで、定期的に手拍子をしてみてください。
「自分なり」と言われたらきっと出来ますよね?この段階ではズレていても全く気にしないでください。
次に、早すぎず遅すぎないスピードの好きな曲を選んで、曲に合わせて手拍子をしてみてください。
リズムがニガテな方は、この段階でおそらくズレはじめますが、やはり気にしないで大丈夫です。
いきなり「Tiktok撮るから曲に合わせて動いて!」と言われても動けないオトナが殆どなのと一緒なので(笑)
そして、曲に合わせた手拍子がズレなくなってきたら、いよいよ曲に合わせて歌いながら手拍子をしてみましょう。
ここでも歌か手拍子がズレるかもしれませんが、それもまた慣れです。
リズムトレーニングについてはこちらにてより詳しく解説しています!
運動性音痴の治し方②イヤートレーニングpart2
ここでお伝えするイヤートレーニングは、先の続きのようなものだと捉えてください。
まず、必要なアイテムは「ボイスレコーダー」です。
スマホに入っている場合が多いのですが、もし入ってなくても無料でダウンロードできるものが沢山あるので何かしらダウンロードしてみましょう。
次に、動画サイトかプレイヤー、もしくはカラオケで好きな曲を流しながらボイスレコーダーに録音し、それに合わせて歌っていきます。
歌い終わったら、再生しながら間違えている場所を書き出すかマーキングします。もし、歌詞を用意できるようであればあると便利です。
そして、そこの音がどうなっているのか、原曲を聴き込みます。
この際に、一部の動画サイトやプレイヤーだと「スピード調整して再生」をする機能があるので、それを活用して遅いスピードで間違えたところのメロディを確認していきます。おそらく、間違えた場所は「聴き取れていなかった場所」のはずです。
ちなみに、iphoneやipadをお持ちの方には「ハヤエモン」という、「ドラ◯もん」のような名前のアプリをおすすめしています(笑)色々なアプリを試してみましたが、ダントツで電池の消費が少ないのでおすすめです!
運動性音痴の治し方③良い発声・発音(身体の使い方)を身に着ける
実は、発声や発音を良くしていく中で、自然と音程が良くなっていきます。
「自分は音痴で・・・」
という方にも、私のレッスンではリズムトレーニングやイヤートレーニングをする前に、まず腹式呼吸や口の開け方、身体の力の抜き方といった基礎を身につけていただきます。
身体を自由に、楽に使えるようになることで音が取りやすくなり、音痴が解消されていくのです。
まとめ
音痴には感覚性音痴と運動性音痴の2種類があって、それぞれに具体的な対策があります。
ただ、どの種類の音痴なのか、自分だけで判別するのは簡単ではありません。
音が上手く取れなくてお悩みでしたら、独学でなんとかするより、ボイトレを受けた方が早く解決出来ます(ただし良い先生に当たればですが・・)。
参考までに、良い先生や教室の選び方についてお伝えしている記事があるので、こちらもぜひご覧になってみてください。
音を上手く取れない原因をチェックして、それに合った練習をしていくことで音程は必ず良くなっていきます。
あなたのお悩みを解消して、上手く歌える手助けになれば幸いです。
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