高い声で歌うアーティストが必ず身に付けている「ミックスボイス」という声の出し方。
歌に興味がある方や勉強や練習をしている方ならどこかで名前は聞いたことがあるのではないでしょうか?
とはいえ、説明する人によって定義や考え方が全く違います。
定義や考え方が違うと、当然ですが練習方法や感覚、コツ・ポイントも異なります。
あまりに情報がとっ散らかっているため「結局、ミックスボイスって何なのか分からない!」
と混乱してしまいますよね。
今回は、現役のボイストレーナーかつ、ミックスボイスを駆使しないと歌えないR&Bやソウルを中心にレストランやバーなどでステージシンガーをしている私がミックスボイスの実例を踏まえて考え方や仕組みから、メリットや出し方、練習方法まで徹底解説していきます!
ミックスボイスの正しい方法論や練習方法を学び、練習をすることで、誰でも身に付けられるので最後までしっかりこの記事を読んで実践してみてくださいね。
ミックスボイスとは?
<必読!!>ミックスボイスの定義は2つあります
もし読み飛ばしたくなっても、ここだけは絶対に読んでくださいね!
巷に溢れるミックスボイスの情報ですが、実はミックスボイスの定義は大きく分けて2種類あります。
1つ目の定義は「ミックスボイス=地声(チェストボイス/胸声)と裏声(ファルセット)が混ざったような声(ミックスされた声)」とする考え方です。
2つ目の定義は「ミックスボイス=低音域から高音域までの広い音域を(音の高さに基づいて使い分ける声のこと)を、いくつかの声区をなめらかに行き交う声の出し方」です。
・・・この2つは全く違った考え方であるにもかかわらず、同じ言葉で「我こそが正しい」とミックスボイスの解説をしているから分かりにくいのです。
ミックスボイスが2つ目の定義であるべき理由
当サイトやこの記事では、2つ目の定義を元に、ミックスボイスの感覚や出し方、練習方法などをお伝えしています。なぜなら、2つ目の定義がグローバルスタンダードであり、発声理論的にもより的を得ているからです。
ちなみに、1つ目の定義は2つ目の定義では「ミドルボイス(中声)」の感覚に近く、ミドルボイスは中音域の発声に適した声の出し方に過ぎません。
1つ目の定義では、ヘッドボイス(高音域の発声に適した声の出し方)を多用する洋楽(Bruno Marz(ブルーノ・マーズ)、リアーナetc…)や近年の邦楽(クリープハイプ、C&K、ビバリー、Superfly(スーパーフライ)etc…)アーティスト達の発声の説明がつかないのです。
以上のことから、ヘッドボイスまでを含めたあらゆる声区をスムーズに行き交う発声方法こそが、やはり正しいミックスボイスと言えます。
ミックスボイスの特徴
改めて、ミックスボイスとは「低音域から高音域までの広い音域を、いくつかの声種を駆使してなめらかに行き交える発声方法」です。
力強く地声で歌っているように聴こえる声から柔らかく裏声で歌っているように聴こえる声まで、あらゆる音色で発声出来るのがミックスボイスの特徴です。
例えば、裏声だけで歌っていては弱々しい歌声になってしまいますし(女性にありがち)、高い声になればなるほどがなり声になってしまっては喉を痛めてしまいます(男性にありがち)。
ミックスボイスを習得することで、裏声のような柔らかい音色でも、地声のような力強い音色でも、低音域から高音域までまんべんなくきれいな発声が出来るようになるのです。
ミックスボイスの例
ミックスボイスは言葉であれこれ説明するよりも、実際の声を聞いた方が分かりやすいです。
そこで、「音色」の視点からミックスボイスが上手なアーティスト・楽曲を紹介していきます。
一言でミックスボイスと言っても、地声のように力強い音色が上手なアーティストもいれば、裏声のように柔らかい音色が上手なアーティストもいて、さらにはその両方を器用に使いこなすアーティストも存在します。掲載しているのは全てライブで生歌を聴けるバージョンなので、声の音色に注目して特に高音を聴いてみてくださいね。
地声のような、力強い音色のミックスボイスが上手なアーティスト・楽曲
B’z / ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017 DIGEST
B’zの公式アカウントより、2017年の「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」のダイジェスト映像です。
B’zのヴォーカルを担当する稲葉浩志さんは、30年以上に渡り邦楽ロックの第一線に君臨し続け、その声は常に変化し続けています。そんな稲葉さんの発声は、基本的に地声感の強い、かなり力強い音色のミックスボイスが特徴的です。
Bruno Mars – Versace on the Floor (Billboard Music Awards 2017) [Live]
洋楽からは、洋楽ポップス、R&Bを代表するBruno Mars(ブルーノ・マーズ)を紹介します。「ビルボード・ミュージック・アワード」の映像では、地声から超高音のヘッドボイスまでの幅広い音域を力強い声で行き交う様子が分かります。
傾向として、黒人の発声は丸く柔らかい音色が特徴的なのですが、ブルーノ・マーズの発声は一般的な黒人ヴォーカリストより力強いのです。ガンガンにフェイクしながらこのように歌えるのはミックスボイスを駆使出来ているからに他なりません。
裏声のような、柔らかい音色のミックスボイスが上手なアーティスト・楽曲
Aimer「コイワズライ」スタジオ ライブ リハーサル (new album『Sun Dance』『Penny Rain』now on sale) FULL
Aimerさんは、かすれ気味でハスキーな声の音色のままあらゆる音域を歌うアーティストです。
ここ5〜10年の間にメジャーで売れている女性アーティストはAimerさんのように、どの音域でもどこか裏声感のある発声をする「天然ミックス」と言われる声質の方が多いように思えます(ボイトレでは声のバリエーションや負荷軽減という観点から、強い発声も出来るよう矯正していく傾向があります)。
Brian McKnight – One Last Cry (Live)
裏声のような柔らかい音色で歌うアーティストは特に洋楽のR&Bに多いです。
その中でも、90年代から2000年代にかけてR&Bの一時代を築いたBrian McKnight(ブライアン・マックナイト)の発声は特に美しいです。最近ではJ Soul Brothersの今市隆二さんが弟子入り(?)したのち一緒に楽曲を出したことで日本でも話題となりました。
ブライアン・マックナイトは低音域でも高音域でも、基本的にミックスボイスでどこか裏声感が強い声質を保ちながらライブではこのようにフェイクしまくるのが特徴的です。ミックスボイスの感覚をつかんでいないとこのように歌うことは不可能です。
両方のミックスボイスを駆使するタイプのアーティスト・楽曲
Superfly – 愛をこめて花束を
Superflyのヴォーカリスト、越智志帆さんは低音域から中音域にかけては裏声感がやや強めなミックスボイスを、中音域から高音域にかけては力強いもののハリのあるミックスボイスを横断的に駆使しているのが特徴的です。
越智さんは、キャリアの中で全体的に力強い発声から徐々に柔らかい声質で歌うウエイトが増えてきています。私の所見では、どこかのタイミングで喉を痛めてしまったことがきっかけになっているのではないかと考えています(男性だと秦基博さんもこのパターン)。
Adam Lambert – Performing “Believe” by Cher – 41st Annual Kennedy Center Honors
アメリカのオーディション番組「アメリカン・アイドル」での優勝をきっかけにメジャーデビューしたAdam Lambert(アダム・ランバート)。歌手のみにとどまらず、舞台俳優としてのキャリアも持ち合わせるアダム・ランバートの発声はトップクラスに凄まじいものがあります。
低音域から女性でも出せないような超高音域までを縦横無尽に、裏声感が強めな柔らかい発声でも地声感の強いパワフルな発声でも歌いこなせる発声が特徴的です。
アメリカのミュージカル俳優のミックスボイス
ちなみに、アメリカのミュージカル俳優は信じられないほど発声が卓越している方が多いです。あらゆる表現をする際に必然的に自由に声を使いこなせる必要があるため、ボイストレーニングを通して結果的にミックスボイスをマスターしている方が多いようです。
もし、ニューヨークに行く予定や願望のある方は、ぜひブロードウェイでミュージカルを観賞するとともに、ブロードウェイ近くで俳優が店員を務めながら生演奏をするDon’t Tell Mama(ドント・テル・ママ)というピアノバーを訪れてみてください。ミックスボイスを駆使した俳優が信じられない声量と発声の美しさで歌う様を至近距離で見ることが出来ます。
ミックスボイスのメリット
無理せず高い声が出せるようになる
ミックスボイスを習得することで、無理せず高い声が出せるようになります。
低い声(いわゆる地声)で出せる音の高さには限界があります。
低い声(いわゆる地声)と同じ出し方のままで限界以上の高い声を出そうすると、喉や声帯が強く閉まり過ぎてしまいます。力強く、張り上げるように高い声を出してしまうと、すぐに喉が疲れてしまったり、声が枯れてしまったりしますよね。
高い声には高い声の出し方があり(ミドルボイスやヘッドボイス、ファルセット)、それぞれの声の出し方を練習して感覚をつかみながら、あらゆる音の高さを行き交う練習をすることでミックスボイスが身に付き、無理せず高い声が出せるようになります。
力強く、芯のある高い声が出せるようになる
高い声を出そうとすると声が裏返ってしまうのは、声帯が締まりが弱く、開いてしまいがちなことが原因です。
ミックスボイスの練習をする過程で声帯を閉める感覚や、閉められる力が身に付くため、少しずつ力強く、芯のある高い声が出せるようになるのです。また、声を出せる音域も広がります。
そうなれば、歌える曲のバリエーションが増えて、よりカラオケやライブで自信を持って歌えるようになります。
柔らかく、ハリのある高い声が出せるようになる
高い声を出そうとがなり声や大きな声で張り上げてしまうのは、声帯の締まりや吐く息の勢いが強いことが原因です。
ミックスボイスの練習をする過程で、適度の声帯の締まり具合や、息を吐く度合いが身に付くため、少しずつ柔らかく、ハリのある高い声が出せるようになるのです。
最近の楽曲はバラエティ豊かな声質で歌われていることが多いので、ミックスボイスを習得することで力強い声も柔らかい声も、どちらも使いこなせるようになります。
音程とリズムが良くなる
高い声を出す際、声を張り上げてしまっても裏返ってしまっても、音程やリズムが取りにくくなってしまいますよね。
ミックスボイスを習得することで無駄な力みが抜け、必要な力感を保ちながら発声出来るようになるため、音程やリズムを取りやすくなるのです。
ただ高い声を出せるだけでなく、思い通りの音程やリズムで歌うことが出来たらより気持ち良く歌えるようになります。
ミックスボイスの出し方とポイント
ここではメインテーマであるミックスボイスの出し方をお伝えしていきます。先のアーティスト達の歌声を聴くととても難しく感じてしまうかもしれませんが、意外と仕組みはシンプルなので以下のポイントを踏まえて練習することで必ず習得出来ます!
まずは「ミドルボイス」を習得すべき
実はここが最重要ポイントです。低音域から高音域までを柔軟に行き交うことが出来るミックスボイスを習得するには、中音域から高音域の声の出し方である「ミドルボイス」を習得すべきです。
ミドルボイスとは、ある程度強く声帯を閉じた状態で高めな声を出す方法です。声帯を開き気味に発声する裏声(ファルセット)とは違った声の出し方であることをよく覚えておいてくださいね。
ミドルボイスは、この後で触れる腹式呼吸や喉の開け方、声帯の閉じ方、鼻腔共鳴のさせ方を学ぶことで習得出来ます。ミドルボイスを習得し、低音域から高音域までを連続的に発声する練習をすることでミックスボイスを使いこなせるようになります。
ミドルボイスについてはこちらの記事で詳しく述べています。
腹式呼吸で吐く息をコントロールする
ミックスボイスを出すためには、強過ぎず弱過ぎず、適度な勢いでコントロールしながら息を吐けるスキルが必要となります。
なぜかと言うと、腹式呼吸でコントロールしながら息を吐くことが出来ないと、吐く息が声帯を通過する際に発声のバランスを取ろうと喉が力んでしまうからです。喉の力みに伴い声帯の閉まり具合も上手くコントロール出来なくなってしまうため、ミックスボイスを出すことが出来ないのです。
腹式呼吸の際、息を吸う時はお腹が膨らみ、息を吐く時はお腹が凹みます。おへそから指2〜3本分下に位置する「丹田」のあたりを中心に、お腹が動くように呼吸してみましょう。
腹式呼吸についてはこちらの記事で詳しく述べています。
喉を開く
ミックスボイスを出すためには、喉を開きながら発声出来るスキルが必要となります。
もし喉を力ませ、喉が締まった状態で声を出そうとすると息が思い通りに吐けず、声帯のコントロールもままならないため、ミックスボイスはおろか、低めな声でも良い声を出すことが出来ません。
喉を開く感覚をつかむためには、あくびの動きで練習するのがおすすめです。
口を縦に大きく開き、「フワァーーー」と息を吸おうとすると、舌の付け根が下がり、喉の奥が大きく広がる感覚になるはずです。この感覚こそが、喉を開く感覚です。喉を開く感覚をつかめるよう、繰り返し練習してみましょう。
喉を開くことについてはこちらの記事で詳しく述べています。
声帯を閉じる
ミックスボイスを出すためには、喉を開きながら声帯を閉じる必要があります。
そんな声帯のコントロールですが、実は声を出さずに練習することが出来ます。
まず、声を出さずに息をなるべく長く吐いていきます。
次に、息を吐いている途中で息をスッと止めてみましょう。すると、喉の奥が動く感覚がするはずです。この感覚こそが声帯が閉まる感覚です。この動きを「声帯閉鎖」と言います。
さらに、「ごっ、ごっ、ごっ、ごっ、ごっ」と声を短く出し、息を止める動きを繰り返してみましょう。声は低くても高くても構いません。
やはり声を出すごとに喉の奥が「パチン」と閉まる感覚がしますよね。
声帯閉鎖の感覚がつかめるようになると、特に普段の声が柔らかめな方は力強くしなやかな声を出せるようになっていきます。
声帯を閉じることについてはこちらの記事で詳しく述べています。
声帯の動きと声が出る仕組み
「喉を開きながら声帯を閉じる」、と言われるとなんだかややこしいですよね。そこで、声帯の動画を参照しながら、声帯の動きや声が出る仕組みについて簡単に説明していきます。
声帯は喉仏の奥に位置する、二つのヒダが対になり、吐く息によって高速で開閉(振動)するパーツです。
声は、声帯がしっかり閉まっていると声っぽい音色で、開き気味な状態だと息っぽい音色になります。
音が低い状態ではゆっくりやんわりと振動する一方、高くなるにつれて高速かつ縦に伸びながら(伸展)振動する仕組みになっています。
ミックスボイスは時に声帯を開き気味に(とはいえファルセットにならない範囲で)、時に声帯をしっかりと締めて(とはいえ強く閉まりすぎずに)、声帯の閉まりをコントロールしながら発声することが肝心です。
また、そんな声帯をなるべく自由にコントロール出来るよう、喉を開けておく必要があるのです。
鼻腔共鳴させる
ミックスボイスを出すためには、適度な力感で発声すると同時に「鼻腔共鳴」させる必要があります。
高い声を上手に発声するアーティストの歌声を聴くと、声が鼻や頭に抜けていくような音色に聞こえます。
「鼻腔」とは、鼻の穴を含め、鼻の奥にある空間のことを指します。鼻腔を響かせるためにはハミング(鼻歌)の練習をするのが最適です。
口を閉じた状態で「ふふん」と声を出してみると、鼻の奥の方で声が響く感覚がするはずです。これが鼻腔共鳴の感覚です。
ハミングをする際に、腹式呼吸を意識してお腹を使って息を吐きながら、口ではなく鼻を抜け、眉間やおでこのあたりから息が抜けるイメージで声を出すことでより強く鼻腔共鳴出来るようになります。
鼻腔共鳴させることについてはこちらの記事で詳しく述べています。
ミックスボイスを出すための練習方法
ミックスボイスを出すための練習は多岐に及びますが、その中でも先に触れたミックスボイスの出し方に基づいて、おすすめの練習方法を紹介していきます。
腹式呼吸で息の量とスピードを一定のまま吐く(支え)
ミックスボイスを出す際、特に中〜高音域にかけて声帯が振動する幅が狭くなります。高音になるにつれ、声帯は伸展する一方、その一部を閉じながら、その他の部分を振動させる動き方をします。声帯が振動する部分が狭まることで、吐く息の通り道が細くなるため、吐く息の量を減らさないと声帯への負担が増えてしまうのです。
そこで重要なのが、吐く息のコントロール力を向上させるための練習です。
吐く息の要素は、大きく分けて「息の量」と「スピード」の二つです、これらはいずれも腹式呼吸を覚えることでコントロール出来るようになります。
ミックスボイスを出すためには、声帯が正しく動くよう、吐く息のスピードを適度に弱めつつ、そのスピードを変えずに吐き続けられるようお腹で息を支える必要があるのです。この力加減はその人の声帯の大きさや柔軟性、骨格や声の響き方などによって異なります。この「支え」の感覚をつかむには、長い間一定のペースで息を吐く「ロングブレス」や「ロングトーン 」という練習がおすすめです。
ロングブレスやロングトーンの練習方法についてはこちらの記事で詳しく述べています。
裏声(ファルセット)で鼻腔〜頭部に声が響く感覚をつかむ(共鳴)
ミックスボイスを出す際、低音域から中音域へ移行するのが難しいです。なぜなら、ボイストレーニングをしていない多くの方は「高い声が鼻腔〜頭部に共鳴する感覚」が明確にないまま声を出してしまっているからです。
この感覚をつかむにはファルセットで発声練習するのがおすすめです。
男性の中にはファルセットが出来ない方もいますが、ファルセットの練習をすることで共鳴の感覚がつかめ、ミックスボイスを出す感覚もつかめるようになるのでぜひチャレンジしてみましょう。
ファルセットの練習についてはこちらの記事で詳しく述べています。
ヘッドボイス(頭声)で声帯を閉じながら高い声を出す感覚をつかむ
繰り返しですが、ミックスボイスを出す際、特に中〜高音域にかけて声帯が振動する幅が狭くなります。高音になるにつれ、声帯は伸展する一方、その一部を閉じながら、その他の部分を振動させる動き方をします。
ミックスボイスを出すためには、ヘッドボイスで声帯を閉じながら高い声を出す感覚をつかむ練習がおすすめです。裏声を出しながら声帯を「キュー」と閉じながら発声していくと、徐々に息漏れが少なくなり、地声感の強い芯のある声になっていきます。
ヘッドボイスは、芸人のクロちゃんやジャパネットたかたさんのような甲高く地声感の強い声をイメージしてモノマネするのがおすすめです。
ヘッドボイスの練習についてはこちらの記事で詳しく述べています。
サイレントレーニングで低い声から裏声までを継ぎ目なく横断する感覚をつかむ(ブリッジ)
「サイレントレーニング」とは、その名の通り救急車や消防車のサイレンのように「ウーーーーーーー」と、低い音から裏声へ、あるいは裏声から低い音へ、または低い音と裏声を継ぎ目なくスムーズに行き交うように声を出す練習方法です。
この練習はファルセット(裏声)を出せることが必須条件なのでご注意ください!
重要なのは音を移動する際に「ガラっ」とならないことです。はじめは声の継ぎ目(ブリッジ・換声点・パッサージョ/後述)が目立ってしまうかもしれませんが、この練習をすることで、ミックスボイスに必要な声帯の柔軟性が向上します。
「ウ」以外にも、「ア、イ、エ、オ」それぞれの母音で淀みなく発声出来るまえ練習してみましょう。
自身の声区と音域を把握し、それぞれの声を出し方を練習する
声は音の高さによって身体が良く響く部位や声帯の閉じ具合が異なります。
「声区」とは、身体の使い方によって区分された声の高さの範囲のことを指します。「声区」は大きく以下の4種類に分けられます。
重要なのは、それぞれの声区でどの範囲を発声出来るかを把握するとともに、それぞれの発声方法を練習して磨くことです。
ミックスボイスは、これらの異なる声区を自由に行き交う声の出し方です。そのため、それぞれの声区で上手に発声出来るようになることで、声区間をより柔軟に行き交えるようになります。
チェストボイス(胸声)
いわゆる地声。胸に良く響く感覚があるため、日本語では「胸声」、英語では「チェストボイス」と呼ばれています。
声帯はしっかりと閉じた状態で発声された声です。
ミドルボイス(中声)
一部の方が「ミックスボイス」と定義している声。口の中の上部や鼻腔、目のあたりが共鳴する感覚があり、日本語では「中声」、英語では「ミドルボイス」と呼ばれています。
声帯は地声同様、しっかりと閉じた状態ですが、振動している部分が少ない感覚がする声です。
ヘッドボイス(頭声)
合唱やクラシック(声楽)ではおなじみの、頭に良く響く感覚がするキンキンした声質から、日本語では「頭声」、英語では「ヘッドボイス」と呼ばれています。
分類上は「裏声」とされていますが、声帯はファルセットほどでないものの強く閉じた状態で発声された声です。
ファルセット(裏声)
一般的に「裏声」とされている声。声帯は開き気味の状態を保ちながら発声された声です。
換声点・ブリッジを行き交う練習
声区と声区の境目のことを日本語で「換声点」、英語では「ブリッジ」、イタリア語で「パッサージョ」と呼ばれています。ここでは呼び名を「ブリッジ」に統一します。
ミックスボイスを出すためには、低音域と中音域のブリッジを継ぎ目なく行き交う必要があります。
なお、中音域から高音域のブリッジを行き交うことも重要ですが、これはかなりの高等技術です。そのため、この記事では低音域と中音域をまたぐ練習についてお伝えしていきます。
低音域ではチェストボイスで、中音域ではミドルボイスで発声するわけですが、ボイストレーニング経験のない方の多くが、ブレイク周辺で喉が力んでがなり声になるか、もしくはファルセットへ裏返ってしまいます。
ブレイクの高さがどの程度かは後ほど説明しますが、ブレイク周辺の高さを「力まず」、「地声の力感」で、「鼻腔共鳴させながら」、ゆっくりと行き交う練習をするうちにブレイクを滑らかにまたぐことが出来るようになります。
男声のブリッジ(換声点)とは
一般的な男声の場合はmid C(ちょっと高めな「ド」の音)の上のE♭〜E(「ミ」のフラット〜「ミ」)周辺です。
森山直太郎さんの「さくら」のAメロ・サビの出だしの音と同じ高さです。
女声のブリッジ(換声点)とは
一般的な女声の場合はHi A〜B(ちょっと高めな「ラ」〜「シ」)周辺です。
絢香さんの「I believe」のBメロからサビにかけて、「自分にさよなら」の「ぶ」と同じ高さです。
ミックスボイスの感覚・コツ
ミックスボイスの感覚は裏声?地声?
ミックスボイスの感覚は結論、裏声のようでもあり、地声のようでもあります。
「答えになっていないじゃないですかー!!」
とツッコまれそうですが、本当にそうなんです。なぜかと言うと、ミックスボイスは裏声感を強めに発声することもあれば、地声感を強めに発声することもあるからです。裏声感を強めにミックスボイスで発声すれば裏声のような感覚になりますし、地声感を強めに発声すれば地声のような感覚になるのです。
もう一度、先に挙げたアーティスト等の歌声を聴いてみてください。特にブルーノ・マーズやブライアン・マックナイトら黒人アーティストの高音発声は裏声感が強めな声も地声感が強い声も、両方を駆使しています。
ミックスボイスの感覚は、あなたが出したい声の音色に基づいて感覚が変わる、というのが答えですかね。
ミックスボイスのコツはズバリ!声をグラデーションさせることです
ここまで度々触れている通り、ミックスボイスは地声感を強くすることも裏声感を強くすることも出来るのです。
ミックスボイスを出す際に、チェストボイスを白色、ミドルボイスを黒色だとイメージしてみてください。
地声感の強いミックスボイスを出したければブリッジ周辺を白色メインで黒色を多少混ぜるようなイメージで、裏声感の強いミックスボイスを出したければその逆のイメージで声を出してみましょう。
チェストボイスとミドルボイスを、異なる2つの色をグラデーションさせるようなイメージで発声することで色々な音色のミックスボイスを出すことが出来るようになるのです。
まとめ
ミックスボイスを習得するには呼吸、発声、共鳴といったボイストレーニングの中心的要素を全て練習し、発声技術やコントロール力を高めていく必要があります。
ミックスボイスを使いこなせるようになることで、これまで到底出すことが出来なかった高音が出せるようになるだけでなく、音の移動が激しくて難易度の高い曲も上手に楽しく歌えるようになります。
中には、元々の声が柔軟でナチュラルにミックスボイスが出来ている方もいますが(特に女性に多い)それはまれなケースです。基本的にはこの記事で触れたような考え方をベースに、あらゆる練習を積み重ねていくことで習得することが出来るので根気強くチャレンジしてみてくださいね!