

こんなお悩みを解決します。
本記事の内容
- ヘッドボイスとは
- ヘッドボイスが用いられている楽曲
- ヘッドボイスの仕組みと特徴
- ヘッドボイスの出し方・感覚
- ヘッドボイスの練習方法
本記事の筆者
この記事を書いている私は、これまでにプロ・アマ問わず100名以上のボイストレーニングを手がけてきた現役のボイストレーナーです。R&B/Soul系バンドのヴォーカリストとして活動する傍ら、過去には大手音楽教室のレッスンカリキュラム企画・立案などにも携わっていました。
今回は、高い声で歌うために欠かせない、「ヘッドボイス(頭声)の出し方と練習方法」についてお話ししていきます。
ところで、「そもそもヘッドボイスって何?」と思っている方が多いのではないでしょうか?
そんな方にも分かりやすいよう、簡単にヘッドボイスの説明をしたあと、「ヘッドボイスを用いている楽曲」の動画を聴いてみてください。コメントを手がかりにヘッドボイスの実例を聴いて頂いたあと、ヘッドボイスの仕組みと特徴、出し方や感覚、コツ、練習方法をお伝えしていきます。
高い声を出そうとすると息混じりになったり軽い声になってしまう方、高い声を力強く歌えるようになりたい方はこの記事を読んでヘッドボイスにチャレンジしてみてください。最初は慣れなくて大変かもしれませんが、少しずつ感覚が掴めてくるはずです。
それでは、前置きはここまでにして早速本題に入ります!
ヘッドボイス(頭声)とは?
ヘッドボイスとは、息漏れのない裏声のことを指します。ヘッドボイスの「ヘッド」とは”Head”、つまり「頭」のことです。「頭に響く感覚がある声」ということで、日本語では「頭声」と呼ばれています。
ヘッドボイスは元々オペラや声楽で用いられている発声方法のひとつで、高音域を力強く歌う際に活用されています。
なお、ヘッドボイス、ファルセット、ホイッスルボイスといった声は諸説あるものの、全て「裏声」に分類されます。日本では「裏声=ファルセット」という認識が一般的ですが、色々な楽曲に登場するファルセットと今回解説するヘッドボイスは別物です。
これらの裏声は声帯をどのように閉鎖させて発声するかで区分されています。詳しくは「裏声の種類や特徴を実例付きで徹底解説!」で解説しています。
ヘッドボイスが用いられている楽曲
ここでは「そもそもヘッドボイスがどんな声か分からない」という方へ向けて、ヘッドボイスが用いられている色々なジャンルの楽曲を動画で用意しました。楽曲ごとのコメントを見ながらぜひチェックしてみてください!
Guns N’ Roses – Welcome To The Jungle
ロックバンドのガンズ・アンド・ローゼスの名曲です。3:42頃〜大サビにかけて、”You know where you are〜”と歌っている中の高音域はヘッドボイスを用いながらシャウトしています。
アクセル・ローズは分かりやすくヘッドボイスを使うヴォーカリストです。ロックだと、レッド・ツェッペリンのロバート・プラント、エアロスミスのスティーヴン・タイラーらもヘッドボイスを用いています。
Beyonce – Crazy In Love
R&Bの歌姫、ビヨンセの有名曲です。3:11〜のフェイクでスコーンと突き抜けるような高音(最高音=Hi F)を出していますが、これもヘッドボイスが用いられています。R&Bの場合は、男女関係なくかなりの頻度でヘッドボイスが登場するので好きな方は「あぁー!この声、ヘッドボイスだったのか!」となるかもしれませんね。
The Magic Flute – Queen of the Night aria
オペラ「魔笛」より。出だしからヘッドボイスの嵐です。オペラや声楽においては、ヘッドボイスの美しさが歌唱力を図る基準のひとつとなっているように思えます。
また、日本の学校で合唱をやっていた女性は「頭声」を強いられることがかなりの割合であります。というか、声楽畑のボイストレーナーは「女性(の発声)に地声はない」と言い切る方までいるほどです。
クリープハイプ – 憂、燦々(ゆう、さんさん)
邦楽ロックの人気バンド、クリープハイプから。1:02頃〜のサビの高音はヘッドボイスが用いられています。
クリープハイプのヴォーカル・尾崎世界観さんはこのキンキンした鋭い声が持ち味ですが、その「キンキン」の正体がヘッドボイスなのです。尾崎さんに限らず、最近の邦楽ロックのアーティストはこぞってヘッドボイスを用いている印象があります。
ヘッドボイスの仕組みと特徴


声帯が伸展している
大前提として、人の声は高い音域を発声しようとするほど声帯が伸展します。ヘッドボイスの場合も声帯が伸展した状態となります。
息漏れしていない(声帯を閉じている)
次に、ヘッドボイスの場合は声帯を強めに閉じているのが特徴です。声は声帯を閉じているところに吐く息が通過し、振動が発生することで生じるため、声帯を閉鎖する度合が強いほど息漏れしにくくなるのです。上記のどの映像を見ても、高音で息が漏れていませんよね。
また、ヘッドボイスは声帯の一部が完全に閉じ、そうでない短い部分が振動することで生じる仕組みになっています。この技術のことを「声帯の削減」、「ショートニング」と言います。
喉を開いている
そして、ヘッドボイスは喉をきちんと開いた状態でないと発声出来ません。喉が開くことによって、声帯のコントロールが可能になり、同時に首全般や口や鼻の奥に声が共鳴してしっかりした音色を出せるのです。
ヘッドボイスの音域
- 男性:HiA〜HiE
- 女性:HiC〜HiHiA
(※一般的な方の参考値です)
男性の場合はざっくりと、クリープハイプやワンオクロックのサビ位の高さ、女性の場合はmiwaやSuperflyのサビ位の高さが実用的なヘッドボイスの音域です。ちなみに私が実用レベルで使っているのはHihiBまでです。
今や、邦楽でも洋楽でも、ロックでもR&Bでもヘッドボイスが多用されているので、やはり覚えるにこしたことはなさそうですね。
ヘッドボイスとファルセットの違い
ヘッドボイスとファルセット(いわゆる「裏声」)との違いは、一言で言えば「息漏れしているかどうか(声帯が閉じているか開き気味か)」です。詳しくは「裏声の種類や特徴を実例付きで徹底解説!」で解説しています。
ヘッドボイスとミックスボイスとの違い
ヘッドボイスを含めた高音発声について、一緒くたに「ミックスボイス」と解説するボイストレーナーも多いですが、ミックスボイスはあらゆる音域・声区を自由に行き交う発声技術であって、特定の音域・声区を指すものではありません。特定の音域・声区を指すのはチェストボイス〜ミドルボイス〜ヘッドボイス・ファルセットといった発声方法です。
これもまた議論が多い話なので、気になる方は「【え、違うの!?】ミックスボイスとミドルボイスの違いとは?【声区融合】」をチェックしてみてください。
ヘッドボイスの出し方・感覚


ここからヘッドボイスの出し方をお伝えしていきます。4つのステップを順番にこなしていくことで徐々にヘッドボイスの感覚が掴めるようになります!
①:裏声を出してみる
ヘッドボイスは裏声の一種です。発声しているときの喉周辺の感覚は地声よりはファルセットに似ています。
もしファルセットを出すのがニガテだったり、裏声の感覚が分からないという方は間違えた発声フォームや変な癖が付かないよう、先にファルセットの感覚をつかんでから練習することをオススメします。
ファルセットの出し方や練習方法については「ファルセットの出し方・コツを実例付きで解説!」で詳しく解説しています。
②:「マ〜」や「ナ〜」で高めな裏声を出してみる
まずは音色や息漏れ具合を気にせず、「マ〜」や「ナ〜」で高めな裏声を出してみます。音階に詳しい方は、男性ならHiC、女性ならHiEを楽器や音楽アプリで鳴らしながら発声してみましょう。この時点では声が息漏れ気味になっていても気にしなくてOKです。
③:頭を突き抜けるイメージで天井めがけて声を出す
次に、同じように高めな裏声を、今度は「口や鼻の奥(のどちんこの奥)や目の後ろ、頭を突き抜けるようなイメージ」で発声してみましょう。表現を変えると「なるべく身体の後ろ側の空洞を声が通るイメージ」です。そして、声が出る先は口でなく頭頂部を目がけるようにするのがコツです。声に角度を付けて、鼻から頭にかけて声を共鳴させる感覚がつかめると、声も少しずつ芯のある音色になっていきます。
④:スピードを付けて細く鋭く声を出す
高めな裏声を出す際に、鼻から頭にかけて声を通すつもりで、かつ「スピードを付けて細く鋭く」発声してみましょう。
吐く息はファルセットを出す時のように「ふぁーーー」でなく「スッ!」と、鋭く出すのがコツです。息を鋭く吐きそうとすることで、ファルセットの感覚に近い状態で声帯が強めに閉まる感覚を掴めれば、その時発している声は芯のあるヘッドボイスになっているはずです。
ヘッドボイスの練習方法


ここでは、ヘッドボイスの出し方や感覚を掴んだり、ヘッドボイスを鍛えるための練習方法をいくつか紹介していきます。
ため息
ヘッドボイスを出すために最も重要なのが「声帯を閉じる」ことです。声帯を閉じる感覚を掴むにはため息が効果的です。
ため息をしながら途中で息を止めてみましょう。そうすると、喉の奥で「ピタっ」と声帯が閉まります。最初は分かりにくいかもしれませんが、練習していくうちに声帯を閉じる感覚や、どれ位閉まっているかが掴めてきます。
ハミングで裏声を発声
ハミングで裏声を発声することで、他の言葉で発音するよりも鼻に響く感じや、頭へ声が抜けていく感じがつかみやすいです。「ん〜(Nn〜)」というより「フーン(Hum〜)」という言葉でハミングしてみましょう。
ハミングの正しいやり方や練習方法については「ハミングの効果と練習方法」で詳しく説明しています。
低い音程へ向かって発声
発音する言葉はなんでもOKです。まずは高めのヘッドボイスを出してから、低音へ向けて半音ずつ移動させていきます。
そうすると、徐々に声が共鳴する部位が変化していきます。具体的には頭や鼻から口や首へ落ちていきます。この共鳴する部位が変化する感覚に敏感になることで、ヘッドボイスとミドルボイスを自由に行き交うミックスボイスを出しやすくなります。
「フォー!」/「ィヤッフウー!」
これは、以前に流行った「レーザーラモンHG」のネタを思い出してください。笑
あるいは、ゲーム界のスーパースター「マリオ」の「ィヤッフウー!」の声でも構いません。
ファルセットと同様、裏声発声は「モノマネ」が非常に有効です。
サイレントレーニング
これはどちらかというとミックスボイスの練習に近いかもしれません。
あなたが出せる極力低い音から、高い音へ向けてサイレンのように「あーーーーー」と音程を徐々に上げていきます。
そして裏声へ移行したら、出せる限りの高い音まで、強い音色を意識して出してみましょう。
大事なのは「いつの間にか裏声へ移行すること」です。逆パターンで、高音のヘッドボイスから「へーーーーーーーい」や「ふーーーーーーう」といった言葉で出せる限りの低音まで徐々に下がっていくのも効果的です。
まとめ


今回は「ヘッドボイスの出し方と練習方法」をご紹介してきました。
ヘッドボイスは色々なジャンルの歌で用いられている発声方法のひとつです。高い声で力強く歌えるようになりたい方は、本記事の手順に沿ってヘッドボイスの出し方を練習することで、ヘッドボイスの感覚が定着していきます。
ヘッドボイスの出し方を覚えることで芯のある高音を出せるようになるのでぜひチャレンジしてみてください!
ヘッドボイスのやり方を覚えた方はミックスボイスの練習をすることでさらに歌が上手くなりますよ。下記の記事で解説します。