「サビの一番高い音でいつも声が裏返ってしまう!」
「アタマでは分かっているけど力んじゃってあの音に届かない!」
キレイに歌えたらきっと楽しいのに、声が裏返ったりイメージしている音に上手く当てられないともどかしくなりますよね。
「声を楽に出したい」
「思い通りに歌えるようになりたい」
この記事をご覧になっているということは、きっとこんな風に思っているのではないでしょうか。
こんにちは。ボイストレーナー/ヴォーカリストのmassuです。
今回は、声を楽に出したいあなたにぜひ知っておいていただきたい「声区」と「換声点・ブレイク」のお話をしていきます。
声にはいくつかの種類があり、その区分けを声区と言います。声区の間を上手く行き来ことができるようになることで、声が裏返ったりがなったりさせず、楽に発声出来るようになるのです。
声区とは?声の種類を知ろう
声区とは、声の出し方によって分けられた声の種類のことを指します。
英語では”Voice Legister”(ボイス・レジスター)と呼ばれており、色々な考え方や立場から各々が好きなように分類しているのが現状です。
なお、当ブログでは、私が普段行っているレッスンや、身の周りのプロミュージシャンの考え方や立場に基づいて今回の話をしていきます。
なぜこんな慎重な物言いをするかというと「声区」でネット検索した際に出てくる説明がサイトによって各々全く異なるからです。
詳しい話は後ほどオマケとしてお伝えしますので、一旦このまま読み進めていただければと思います!
胸声(チェストボイス)
胸声は、私たちが日常会話をするときに通常使う声です。
チェストボイスや地声とも言われており、太くて厚みのある音色が特徴です。
胸に手を当てて、低い声を少し長めに出してみましょう。
そうすると、胸の上部や首のあたりに振動を感じるかと思います。
実際は胸に響いているわけではないものの、感覚的にそう感じられ、また「胸声」という言葉や概念が定着していることもあり、チェストボイスと呼ばれています。
中声(ミドルボイス/ミックスボイス)
中声は、この定義づけがボイトレ界で最もいざこざとなるトピックのひとつです。
改めて各所の情報をブラッシュアップさせてみたところ、「裏声のひとつ」として定義づけている方が多いように思えます。
確かにそう説明すると確かにわかりやすいのですが、私は「地声と裏声を混ぜるイメージで出す声」と説明しています。
・・・こう言うとクラシック畑の方からは非難轟々となるかもしれませんが、私としてはアカデミックな定義付けよりも当人が楽に出せているかが重要だと捉えています。
当ブログはポピュラーミュージックやビジネススキルとしてのボイストレーニングに興味がある方を主な対象に情報発信をしているので、このように定義づけることにします。
歌を歌う中で、高いところで出し方が変わっていく箇所があるかと思います。その周辺の音域が中声です。
英語では”Mixed Voice”(ミックスボイス)や”Middle Voice”(ミドルボイス)と言われ、発声時に口や鼻から頭にかけて響く感じを伴います。
文章だけでは伝わりづらいので、有名な曲を参考に耳で感じ取ってみましょう。
絢香 – やさしさに包まれたなら
まず、絢香さんが歌う「やさしさに包まれたなら」のカヴァーです。
1:55頃〜の高い声は中声で発声しています。声に無駄な力みが全くなく、でも強い力感を伴っていますね。これが中声の特徴のひとつです。
Brian McKnight – Back at One
次に、洋楽R&Bから、Brian Mcknight(ブライアン・マックナイト)の”Back At One”です。
1:58頃〜の、2番のサビ前のフェイクを伴う歌い回しの中で、「地声」というには柔らかくて、「裏声」というより柔らかい感じのする声で歌っていますね。「地声だか裏声だか分からない」、これもまた中声の特徴です。
頭声(ヘッドボイス)
次に、頭声は字のごとく、発声時に頭に響く感じを伴う声です。
英語では”Head Voice”(ヘッドボイス)と呼ばれており、日本のポップスでも最近使われるようになりましたが海外ではロック、R&B問わず、曲の聴かせどころで多用されています。
まず、先のBrian Mcknightの動画の2:34頃〜30秒ほどご覧ください。クライマックスへ向かうひたすら中〜高音域が続くCメロの最後に「太くて芯のある高音」を出していますね。これが頭声です。
小柳ゆき – 愛情
小柳ゆきさんの「愛情」もミドル〜ヘッドボイスのオンパレードです。
5:07頃〜ラストにかけて、サビの最後でバチコーーーン!!!と響き渡る超高音。これもヘッドボイスです。
Alexandros – ワタリドリ
Alexandrosの「ワタリドリ」は、ボイトレをしていないと歌うイメージすら湧かない方が多いのではないでしょうか。女性が歌っても高いくらいだと思います。
そんな『ワタリドリ』ですが、0:48頃〜のサビ「とどく」の「ど」や「はばたいて」といった部分はヘッドボイスで歌っています(ちなみにサビ後半の超高音はよくよく聴くとヘッドボイスというよりファルセットっぽいです)。
ファルセット
ファルセットは、一般的に日本語で言うところの「裏声」と同義だとされています。
これまで例に出した曲を聴くと、高音で息っぽい音色で歌っていた部分があったかと思います。それがファルセットです。
ファルセットとヘッドボイスの違いは「息漏れしている感」と「声の芯」の度合いや有無といった部分です。
(オマケ)ボイトレ界で一番激しくモメている!?用語や分類の争い
さて、ここで箸休めがてら、ボイトレ界にはびこる声区の用語や分類の争いについて少々言及します。
ざっくり言って、クラシック畑の方は「地声か裏声か」という捉え方をしている方が多く、ポップス畑の方の中には「声区はない」と言う方もいれば、「音域別に声域が分かれている」と考えている方もいます。
これも正解は人それぞれ、というかバックグラウンド次第です。
ちなみに私のバックグラウンドは主にR&Bやゴスペル、ロックで、いずれも低音から高音まで広い音域をひっきりなしに行き交うジャンルの音楽です。
こうした音楽をそれらしく歌うにはひとまず低音、中音、高音や裏声をある程度区分けして練習を重ね、各声区の境目を柔軟に行き来できるような発声練習を重ねることが重要です。
ボイストレーナーがどんなバックグラウンドで発声理論をどう捉えているかでレッスンの方向性は大きく変わります。当HPでは一旦声区を切り分けて捉え、それぞれのレベルを高めていきながら後述する「換声点・ブレイク」をスムーズに行き交うような方法論を推奨しています。
声の分かれ目?換声点・ブレイクとは?
これまでに紹介した各声区の境目のことを「換声点」や「ブレイク」、あるいは「ブリッジ」、「パッサージョ」などと言います(本記事では「換声点」と統一して記載します)。
換声点の存在を意識しやすいのは主に中〜高音域の高めな音を発声する時です。
高い声を出そうとする際にギュッと喉が閉まりがなり声になってしまったり、あるいはコントロールしきれずに声が裏返ってしまうという方はとても多いです。
こうした問題については声区をスムーズに行き来できるようになることで概ね解決できます(※もちろん限界はあります!)
換声点をなくす!声区融合について
換声点をなくす、あるいはスムーズに行き来できるようにすることを「声区融合」と言います。
とはいえ、私はこの言葉の意味合いが微妙だと考えています。
なぜなら、声はあらゆる音域において、あらゆる音色を出そうとグラデーションさせながら出すものだと捉えているからです。
ただ、目線を変えると「換声点をなくす」→「換声点を行き来しながら自由に音色を調整する」という図式になるので、まずは歌っていて声質が急に変化しないよう心がけることが重要です。
先のBrian Mcknightの歌において、広い音域で歌いながら、強弱だけでなく声の力感の度合いをコントロールしながら歌っているのが特徴です。Brian Mcknightの特徴、というよりR&Bの伝統的な特徴と言えます。
まとめ
声区と換声点・ブレイク・声区融合に関する今回の記事はいかがでしたか?色々な人が色々なことを言うので最も掴みづらい部分のひとつなのが現状です。
ただ、こうして実際の曲に照らし合わせていくとなんだか合点がいく感じがしたかもしれません。
あなたにとって大事なのは、専門的な定義や分類よりも「どうやったらあなたが歌いたい歌をイメージ通りに、良い感じに歌えるか」だと思います。
そのためには、知識に囚われすぎず、発声練習を重ねて力感や感覚を掴み、馴染ませていくことが必要です。
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